ヒロ

現代娼婦考 制服の下のうずきのヒロのレビュー・感想・評価

5.0
”父さん博奕ですっちゃって、母さん男と逃げちゃって、当てもないのに汽車に乗り、どこか遠くへ行きたいな、子守唄替わりの汽笛の音とともに”と壮絶すぎる歌謡曲を見事に映像に落とし込んだ傑作ロマンポルノ。無邪気であるが故に大胆な邪気を纏った拳銃で狙いを定めたその先にあるものとは?『牯嶺街少年殺人事件』、主人と奴隷の圧倒的主従関係の崩壊を告げ不意に転がり込んできた革命のチャンスを逃さない彼女の嗅覚はドライブ帰りの洗車室を異空間に仕立て上げる『セブンスコンチネント』、そんな彼女が唯一心通わす吃りのレイプ魔が鉄パイプで殴りつけるダッチワイフを捉えるロングショットは紛れもなく黒沢清、もはや記憶にさえ無い娼婦であったらしい母が原因のこの奴隷人生を怨むでも嘆くでもなく、機を伺い勝ち得た自由の身で歩むのは母と同じ娼婦の道、寂れたラブホテルで交わった男に冷たい視線で金をせびり言い放つ「あたし娼婦なのよ」には何も言えねぇ。王子様の迎えなんてこない金を持て余したおじさまを大らかに迎え入れる救いの無いシンデレラストーリー。曽根中生のベスト。

2020-43
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