カラン

LIES/嘘のカランのレビュー・感想・評価

LIES/嘘(1999年製作の映画)
4.0
痛恨の一撃にかけている映画。観ている人が少ないので、少し応援してみる。

SとMの恋についての話。性描写が多いので一般に勧められたものではないが、謎めいた洋館でボンテージファッションに蝋燭というような、ステレオタイプなSMとは違う。

SMのステレオタイプは、サドとマゾッホ〔18〜19世紀〕からなので、基本的に貴族趣味で耽美主義的で、ドラキュラ的な美のイメージを作ろうとしているのだろうが、あまりに型通りで〔その儀礼的な型が大事らしいが〕、サドの小説が持つ暴力性を骨抜きにして、しつこく小綺麗でありきたりなSMを繰り返されても、それこそサドの言葉じゃないが、apathy「無感動」である。SMというわけではないが『マジカルガール』のような映画もその枠でおさまってしまっている気がした。絵はご多分にもれず綺麗なのだが。有名どころでは『O嬢の物語』と同じで、芸術っぽくしようとした分、凡庸なのだ。凡庸なSMは、美しいのではなく、可哀想で痛ましいだけだ。

本作はというと、手カメラで撮っているのか、肉肉しく生臭く、野暮ったい。あられもない性描写が永遠と続いて、いつまでこれをするんだという調子の下劣な性描写である。SとMの反転もあるが、汗臭いまま。ただカタルシスがやっとやってくる。最後、痛恨の一撃。

この一撃には目が覚めた。この一撃のための映画なのだと思う。サドとマゾがありえない交錯をする一瞬は多いにカタルシスを感じさせてくれた。
カラン

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