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MERU/メルーのdm10foreverのネタバレレビュー・内容・結末

MERU/メルー(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

【それぞれの闘い】

その日は会員サービスデーということもあって、仕事は有休とって映画三昧でした。
で、1日を有効活用しようと事前にスケジュールを組んでから出発するのが日課なのですが、朝一番の時間帯に観ようと思っていた映画がなく、年に何度かの「何となくセンサー」が発動しての鑑賞となりました・・・が、まさかまさか、面白い!!
最近「エベレスト」や「疾風ロンド」など雪山をテーマにした映画が多かった中で、どれもスルーしてきたじぶんにとっては「なぜこれを選んだのか」がわからないというレベルだったのですが・・・。結果的には選んだ自分を褒めてあげたいですね。
今作品はドキュメンタリー作品なのでCGも過剰な演出も一切ありません。
そこには勇敢な3人の男と難攻不落の山「MERU(シャークスフィン)」があるだけです。
しかし、この3人には台本なんかを遥かに超越したドラマがあります。
それぞれの家族への思い、過去への葛藤、自分自身との闘い・・・。様々な思いが複雑に交差しながら「チーム」としてMERU登頂に挑みます。
三人とも登山家としての実力は一級品。それでも最初のアタックは失敗に終わります。
決して「技術」や「体力」だけで登れるほど易しい挑戦ではなかったのです。
『ここを超えれば!』という自分自身に打ち勝つくらいの強い精神力と同じくらい『悔しいけどここで下山しよう』という決断ができる理性も必要です。「勇敢」と「無謀」は違うということです。
でも、極限状態で「(どちらの意味でも)自分自身に打ち勝つ」ということは並大抵のことではありません。山を登るうえでチームを組むというのは単純に「荷物を分担して持つ」とか「怪我したときに助けてもらえる」という意味だけではなく、他者といることで冷静な判断を保つためなんだと感じました。
リーダーのコンラッドがジミーとチームを10年も組んでいる理由も「彼は常に理性的なんだ」と語っていましたが、なるほどと頷けます。
『何故山を登るかって?そこに山があるからさ』昔から冗談のように言われている言葉ですが、実はこれって深い言葉なのかもしれないなと今回の鑑賞で改めて感じました。
きっとそこに行った者、そして頂上に立った者にしか感じることのできない感覚なんだろうなって。
別の映像の撮影中に九死に一生の大怪我を負ったレナンの自分との闘い、そしてレナンの事故の現場にも立ち会っていて、その四日後自分も最大級の雪崩に巻き込まれ奇跡的に生還したジミーも自己不振に陥ります。リーダーのコンラッドは過去に師や盟友を山で失っていて、その盟友の家族を自分の家族として受け入れます。贖罪としてなのかは定かではありませんが、彼も背中に大きな十字架を背負っています。そしてそれぞれの思いが3人を再びMERUへと向かわせます。
かといって、やはり簡単なアタックではありません。途中テントが壊れたり、レナンに怪我の後遺症が現れたり・・。数々の困難を乗り越えて人類初登頂を成し遂げたとき、自然と涙が出ました。IMAXでもやってほしかったくらいの傑作です。観てよかった!
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