<概説>
ヒマラヤ山脈において前人未踏の登山ルートが存在した。とある登山チームが垂直の絶壁をよじ登る道を踏破する、その一瞬までのドラマを描くドキュメンタリー作品。
<感想>
登山家のドキュメンタリーといえばエベレストという偏見があります。逆にヒマラヤ山脈ならエベレスト以外は普段目を向けられなかったわけですが、まさかこんな断崖絶壁が登山ルートにあるとは。
視線を下に向けるだけで足がすくむ映像。加えて一面凍傷の危険のある銀世界。どこもかしこも人間を拒絶する大自然で、流石『フリーソロ』の監督と脱帽するしかないです。
ただあちらと違うのは人間ドラマ、というより人間に主眼を置いているところでしょうか。自然と同等に人間の葛藤や肉体の負荷にまで目を向けて、死と隣接するところにいる人間の業を描いています。
達成感と危機感。損得の天秤は釣り合っていないのに、それを無理に釣り合わせてでも到達したいという願望。切望。傍観者の視点からは真には理解できないからこそ、異世界としての迫力がある。
映画的な映画とはちょっと違いますが、実は実世界にもこんな冒険があると。なんだかゾクゾクしてしまいますね。