ノラネコの呑んで観るシネマ

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.2
南北戦争下のミシシッピ。
南軍を脱走し、沼地の奥に脱走兵と逃亡奴隷のサンクチュアリを作った男の物語。
討伐の南軍騎兵隊とも戦って撃退しちゃう。
なんだか「地獄の黙示録」のカーツ大佐みたいな設定だけど、この人は実在の人物。
異端の白人が黒人を率いるという物語は、所謂white savior話型の様にも見えるが、ゲイリー・ロスはこの人物をもう少し複雑に造形する。
ニュートン・ナイトは、白人とか黒人とかの人種を超えた「金持ちに虐げられた土着の農民」という一つの民族集団を作り上げるのだ。
だからこの物語の核心は、戦争の終わりと共に彼らが共通の目標を失って、民族集団として瓦解してゆく終盤にある。
南北戦争は終わりでなく始まり。
奴隷解放によって生まれた新たな葛藤は、戦争中の様に激しく表に出ない分、弱き者により過酷にのしかかる。
既得権層の抵抗、KKKの勃興、巧妙化する人種差別。
映画は1862年から1877年までのニュートン・ナイトの半生と、85年後に起こったある出来事を通し、合衆国の長い長い闘争の歴史を紐解く。
点で眺める歴史と線で眺める歴史は、違った顔を見せる。
しかし貧しい白人たちが反乱を起こし、一旦は勝利したかに見えるものの、政治家の二枚舌によってハシゴを外されるってどこかで聞いた話だ。
構図は激変しているが、ニュートン・ナイトの葛藤はいまだ現在進行形。
変則的な筋立てのバランスは良いとは言えないが、アメリカ史を考える上でユニークな視点をくれる力作である。
ブログ記事:
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