けーはち

海難1890のけーはちのレビュー・感想・評価

海難1890(2015年製作の映画)
3.3
1890年、トルコのエルトゥールル号の海難事故で船員たちを救ったのは日本人だった。95年後イラン・イラク戦争で取り残された日本人に、トルコの国民はその恩返しをするのだった!

★そう言えば、85年のイライラ戦争の頃って自衛隊が海外で自国民を救出することも出来なかったのだね。何とも言えない話だ。

★1890年エルトゥールル号編と1985年イライラ戦争編の二編構成。トルコと日本を代表する主人公格の二人が、一人二役を演じているのだが、まさか、「私たち、遠い昔に(前世で)会ったことがあるかも」っていうような古い少女漫画ちっくなセリフを2015年も暮れようとする時期に聞こうとは……。

★ストーリーは、ざっくり言って「善意を善意で返す」ってだけの代物なので、美談も美談すぎて「イイハナシダナー」と曇りのない目で(?)言うしかないんだけども、導入が映画としてもキチンとしていて良い。日本とトルコの画面をテンポ良くカットバックで繋いで文化背景を比較し(剣術稽古など)また別れを惜しむ夫婦の愛を見せ、その後も船中の生活や鍛錬のためのトルコ相撲(ヤールギュレシ)のシーン、日本の土産を楽しみにしている様を見せ、感情移入させてからの、ドーンと海難事故である。嵐を予期して漁を切り上げお座敷で芸者遊びにふける日本の漁師と対照に、台風に対処しきれないエルトゥールル号の様子を、お座敷のあふれる盃や転倒して溢れる金魚鉢の様子などと切り替えて対比する映像は面白い。三味線の弦がぶつんと切れるのに呼応して船のマストがボキッと折れる瞬間は戦慄が走った。

★そこから美談アンド美談の展開もさることながら、そも企画段階からこの映画、何やら国家的政治的プロジェクトの産物の匂いはするのだが、それにしたって面白いのは、この映画を公開しようとした直前にロシアとトルコの関係が悪くなって、トルコに行こうとしていた観光客が二の足を踏む状況だってことだろうか……いや、これもまた歴史の皮肉ってヤツである。

★何はともあれ、ヒロインの忽那汐里(「くつなしおり」って読む)が可愛い!これだけで視聴意欲は倍増する。トルコのケナン・エジェという俳優も、なかなか高貴な顔立ちで良い。