浅見ベブ彦

愛と平成の色男の浅見ベブ彦のレビュー・感想・評価

愛と平成の色男(1989年製作の映画)
3.8
「バカヤロー2」の併映として企画された添え物的本作。
3日で仕上げた脚本、公開2か月前のクランクイン、とかなりドタバタ早撮りした割にはとっ散らかることなくまとまりがみられる内容で、カメラマンがそれまでの前田米造から仙元誠三に変わり、画のタッチ・質感も様変わりしている。(仙元誠三氏は引き続きキッチンも担当)

森田曰く、チャンドラーが書きそうなキザな台詞を主人公(石田純一)に当てはめたとのことだが、この時代性と石田自体の素質が相まって妙な実質感のあるキャラクターになっているのがおかしい。
”今夜の僕は探偵だ””今晩の演奏は君の瞳がコード進行だった”なんてつぶやかれても違和感がないのである。

また結婚を迫られた末に、関係する女性陣から離れるためにヘリを使って逃亡するラストは、浮ついた時代から儚くも抜け出したいと、一種の現実逃避欲でもあるように感じる。
「幕末太陽傳」の佐平次にも通じるこのラストシーンは、2年後(まだまだバブル期)の「遊びの時間は終わらない」でも使われていた。