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ブルックリンのminamiのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
3.8
アイルランドの少女が、最愛の姉のすすめでブルックリンへ移住し、精神的にも成長し1人の女性として自立していく物語。

ブルックリンへ旅立つまでは冒頭10分くらいしかなく、詳しい説明やセリフもほとんどないけれど、主人公のエイリシュが田舎町で仕事にも恵まれず冴えない暮らしをしていることや、姉から深く愛され姉を慕っていることがとても伝わってくる。

旅立ってからすぐも、初めて故郷を離れる不安や慣れない場所での心細さ、ホームシックになってしまう心情が嫌と言うほど伝わってきて、主役のシアーシャ・ローナンの演技力や監督の編集技術に感心しきり。

特典の監督の説明付き未公開シーン映像を見たら、なくなくカットしたことによる効果がよく分かって面白かったです。

それ程目新しいストーリーではないけれど個人的に少女の成長物語が大好きだし、自分も田舎から上京している身なので共感できる部分も多くすごく楽しめました。

ブルックリンの下宿のオーナー夫人や先輩達、新しい職場であるデパートの人達など、少し意地悪だったり決して居心地良い街でもなさそうだけど、根は悪い人達じゃないんだなと思わせる可愛くて温かいエピソードもたくさんあって素敵でした。

クリスマスにホームレス達の為に催した食事をふるまう会でおじさんが歌うアイルランド民謡みたいな歌は、意味が分からなくても心に沁みて泣けてきます。

最近お気に入りのドーナル・グリーソンもなかなか素敵な役どころで、相変わらずキモかっこいい感じ♥

シアーシャは美人という訳では無いし、スタイルも抜群ではないけれど、どんどん美しく聡明になっていく様が見ていて本当に気持ち良かったです。
後半、計算高いズルい女みたいに映るところもあるけれど、葛藤しながら必死に自分の居場所を求める姿には心をうたれます。

居場所って結局どこにあるわけでもなくて、自分で決めて作り出すもの。
誰かから求められ、居場所を用意されるのはごく一部の限られた人だけだと思うんです。
エイリシュは運良く、求めてくれる人達に良いタイミングで出会え居場所を選択することが出来たけれど、
自分で居場所を作り出し居座ることしか出来ない人達も世の中にはたくさんいる。
ここで生きていくんだ、と自分で決め強い意志を持って前にすすむしかない。
少なくとも自分はそうだから。

そういう考え方は、この映画のテーマとは少しズレているかもしれないけど、自分の居場所について改めて考えたり故郷を想ったりもできる素敵な作品でした。

設定·主題★★★★
物語·脚本★★★
映像·演出★★★★
配役·演技★★★★
音楽 ★★★
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