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ブルックリンのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
5.0
映画ってやはりいいものだなと思わせてくれる作品には、やはり満点を与えたい。「ブルックリン」は劇場で見た時、前半は笑いが止まらず、後半はシアーシャ・ローナンの演技に惚れ惚れする。まず冒頭の1950年代初期のアイルランドのシークエンスがとにかく素晴らしい。そのワンショットは美しく、味がある。冒頭から引き込まれるだけでなく、この映画のセリフは洒落てて良い。イタリア料理が世界一だと言えば、好きになれるわと返す、この何ともないような台詞を役者陣が笑みが溢れるくらいに上手くする。僕も何カ国か長く滞在することがあったが、実はホームシックとは無縁。この作品はホームシックあるあるを割と深く描いているが、興味深いのはアイルランドとアメリカの言葉や文化のギャップだけでなく、カルチュアル・フリクションを上手くまとめている。ブルックリンでの葛藤、アイルランドでの葛藤、どれも主人公の理想・現実を対比させていて、かつそのダラダラしそうな内容をとても簡潔に面白く描いている。ある理由でブルックリンからまたアイルランドに戻る主人公の感情にはとても共感できる。例えば僕のアメリカ人の友人も長く日本で働いていたため、帰国したら日本人、日本にいれば外国人として見られるという悩みだった。インドシナ難民では受け入れをしていた日本だが、だいぶ馴染みがない題材なので非常に勿体無い。アイデンティティの崩壊とは本当に恐ろしい。移民・難民とは中々縁のない日本であるが、この映画は色んな背景を反映させて、1人の少女の生き様をとにかく楽しく見せてくれる。すごく良く分かる。僕も日本の嫌〜〜な部分が、帰国したら余計悪く見えたり、そもそも日本より海外の方が居心地が良かったりする。受け入れる勇気と、拒む勇気、生きる上での理解がどれほど重要で、どれほど美しいことか。全体的に魅力に溢れ、ドストライクな映像美と脚本が大好きだ。シアーシャ・ローナンの演技は本当に素晴らしい。ブリー・ラーソンには負けてしまったが、充分オスカーに値する。脇を固めるキャストも魅力的だが、この映画は焦点というものを理解している。
総評として「ブルックリン」は文句がない作品だ。最初から最後までロマンチックで、台詞も説明過多ではなく、真っ当に芸術で表現された良い映画だ。
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