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ブルックリンのkouのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
4.0
《あの頃が遠い昔のよう》
本作を見終わって、強く自由な女性はこうして成長していくのだろうと思った。また、故郷を持つ人なら誰しも感情移入できる作品だと思う。その望郷や自分の生きる居場所という題材が、古い日本映画や、NHKの連ドラを思わせるような要素であるため、日本人でも共感できる内容になっていると思う。

今作のストーリーは大きく二つに分かれる。アイルランドの片田舎に暮らす主人公のエイリシュ(シアーシャ・ローナン)がアメリカに行き、多くの苦労をしながらも成長し、そして愛する人と場所を見つけるまで。そして後半はあることがきっかけになって故郷であるアイルランドに戻ってからを描く。特に前半の流れがとても素晴らしく、エイリシュが荷造りを姉としたり、船で見送られるシーンなどは泣けてしまった。また、散々な船旅の末、開かれたドアの先の光に胸が熱くなった。故郷を離れる時のことを思い出させる。

誰も知らない土地、苦難と苦労の果てにエイリシュは自分の居場所を作っていく。とても印象深いのはエイリシュが神父の元へ成績を見せに行くところだ。エイリシュは「あの頃が遠い昔のよう」というような台詞を言うが、まさにそうなのだ。つい最近までの出来事がまるで遠い遠い過去のように思える。とても共感してしまった。

アイルランドの故郷へ戻り、彼女は一つの選択を迫られる。それは自分のいる場所を決めるというとても難しい選択だ。彼女が選んだ決断、そして自立した女性の姿に感動した。物語の序盤から考えるととても強く、美しくなったエイリシュの姿から、素晴らしい成長の物語だともいえる。映像も色彩等とても美しく、間違いない一作だと思う。
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