オーデュボン

ブルックリンのオーデュボンのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
4.5
水着。

1950年代の物語。アイルランドに住む主人公のエイリシュは、仕事を求めてニューヨークへ移住することを決意する。慣れない環境や寂しさから、故郷への思いを募らせる中、ブルックリンでイタリア人男性のトニーと出会う。

序盤から話はテンポ良く進み、すぐにニューヨーク行きの船のシーンへ。エイリシュは不味い食事や大きく揺れる船に悩まされる。そこで手を差し伸べてくれた同室の女性や、アメリカの地で見守ってくれた職場の先輩にも支えられ、彼女はなんとか生活を送っていくが、一番の転機はやはりトニーとの出会いだ。トニーと幸せな日々を送るエイリシュを演じるシアーシャローナンはみるみるうちに美しくなっていき、服装や性格も明るくなっていく。
トニーの弟がとても愛らしいキャラであり、だからこそ後半のジムの家族との対比が映える。この映画の一番の肝はそういったアメリカでの出会いと、故郷アイルランドでの出会いの対比である。もちろんジムも紳士的な男性ではあるが、トニーの気持ちを想うと中盤の展開は胸が痛む。そういった複雑な感情を観客に持たせる、そして個々人で感情移入の仕方が異なりそうな面白い恋愛映画だ。
更に展開を進める重要な要素(ある人物の死や、噂の出所など)がどれも唐突ではなく、その存在がそれ以前に仄めかされているものばかりで、その伏線回収力も見事だ。

そして、ラストシークエンスでこの映画で最大の「対比」が描かれる。船の上での些細な会話から始まるそのシーンの映画的な構造に気づいた瞬間から、滝のように涙が止まらなかった。ただ2人の男の間で揺れ動く女性の心情を描いた映画ではなく、その土台として彼女自身の成長という大きなテーマがあったことを思い出させてくれる。最後のエイリシュの決断をどう思うかは人それぞれだろうが、個人的には胸が締め付けられていた中盤以降から救い出してくれたような、最も見たかったラストシーンを見せてくれた。