こしあん

ブルックリンのこしあんのレビュー・感想・評価

ブルックリン(2015年製作の映画)
3.6
アイルランド出身の内気な田舎娘・エイリシュにモテキ到来!
正反対のタイプのイイ男二人からのアプローチ。なんて羨ましいんだ!!
どっちを選んでもバラ色の人生じゃないか!!!
『前門の虎、後門の狼』ならぬ、
『西口のパンダ、東口のアルパカ』みたいな状況でございます。

新天地・ブルックリンで出会うトニーは、さすがイタリア人、感情表現がストレートで情熱的。
これはもう「あまーーーーーい」って叫びたくなっちゃいます。
彼との出会いでどんどん垢抜けていき、エイリシュのまわりはお花畑のよう。
こないだまであんなにホームシックで、お姉さんからの手紙を読みながら泣いていたのにね!
でも、舞い上がっちゃう気持ち、よ~~~く分かります。

帰省したアイルランドで再会するジムは、トニーとは正反対のおだやかな癒し系。
礼儀正しく、おばあちゃん世代に好かれそうな“健全・安全・好青年”。

そんな二人のあいだで揺れる女心。

「さぁ、エイリシュ、どっちを選ぶんだい?」とワクワクしながら見守っていましたが……ほほう、そっちですか~。

水着の着替え方で都会と田舎を描くのが面白かったです。
エイリシュの成長を、船での行動で表現しているところも好き。

寂しさと困難が、女性を強くしなやかに成長させるんですね。
メールも携帯電話もなく、遠く離れた人とは手紙でのやりとりになる時代。
気軽に故郷に帰ることもできず、知らない土地でひとりで寂しさと闘っている。

安心感、思い出、あたたかさ、愛情、閉塞感、束縛、息苦しさなどがごちゃまぜになった『故郷』というやっかいな存在。
生まれ育った土地との距離の取り方って難しいなぁとしみじみ思いました。

故郷に良い思い出がたくさんある人もいれば、もう二度と戻りたくないほどつらい思い出しかない人もいる。

どんな生き方を選ぶのか、自分以外の人間にとやかく言われる筋合いはない。

生まれてくる家や親、兄弟、姉妹、国や地域は選べないけれど、結婚相手や友人は自分で選ぶことができる。

忘れてはいけないのは、その相手を選んだのは自分、選ばれたのも自分。
誰とどこで暮らしていくのか、誰と一緒にいる時の自分が好きなのか。
考えて考えてとことん考えて選択し、選んだ結果に覚悟と自信を持って歩む人生は、どちらを選んでもきっと幸せな人生だと思います。

エイリシュの行動には共感できる部分はあるけれど、「おいおい、それは……」と賛否両論ありそうです。
観る人や状況によってだいぶ受け止め方が変わる映画かなって思います。

でも、パートナー選びは本当に人生を大きく変えるから、いろいろ迷ってしまうのはある意味、仕方ないのかなぁ。
迷わないほうが逆に怖い気もします。
迷うということは未来を考え、自分の人生を真剣に生きている証拠。

他人の意見を聞ける柔軟さと、周りに流されすぎない芯の強さ。
両方をバランスよく使いこなすしなやかさを身に付けたいなぁと思いました。
こしあん

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