emily

ピンクとグレーのemilyのレビュー・感想・評価

ピンクとグレー(2016年製作の映画)
3.7
人気俳優の白木蓮吾が急逝した。発見したのは親友の河田大貴。河田は知名度のない俳優だったが、一躍時の人となり、名声を手に入れる。白木は自殺なのか?事故なのか?その原因は?

 カラーとモノクロを駆使し、芸能界の表の顔と裏の顔を描いていく。「開始62分の衝撃」と謳われており、それを期待しながら待つ。そのわくわく感を堪能しながら、見事に物語が翻り、ぐんぐん惹きこまれていく。現実と虚構の狭間で、役者たちが見せる顔も一変する。さらには観客そのものも巻き込み映画の外までしっかりなだれ込んでくるのだ。映画である事をほのめかし、私達が生きてる現実も、また誰かの作られた物語であることを考えさせらえる、非常に濃厚で層の厚い作品になっている。小物使いや、映像の交差、時間軸の交差、意味深に積み上げていき、観客の心を刺激する。

 私達がブラウン管越しに見てる芸能人のきらびやかな表の世界。まさしくそれは見せるために作られた世界である。そうして絶対に明かされることのない裏の顔が当然ある。表を守るためにはそれなりの裏の顔があるはずだ。その裏の顔は全く映画の中のように華やかでもきらびやかでもなく、私達と何の変わりもないのだ。同じように悩みを抱えていて、当然それ以上の重圧感に耐えている。しかし私達が見るのは表の顔だけでいい。人の事なんて所詮他人には分からない。でもそれでいい。裏の顔なんて知る必要もないし、煌びやかな物だけを信じて私の物語を作り上げればいい。
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