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人生はローリングストーンのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

人生はローリングストーン(2015年製作の映画)
4.0
めちゃいい映画だけど、30代男性が会話するだけの超地味映画なのでお勧めするかと言われれば微妙な作品です(笑)。作家デヴィッド・フォスター・ウォレス(ジェイソン・シーゲル)の自殺の知らせを聞いたライター(ジェシー・アイゼンバーグ)がかつてインタビューのために同行した5日間を回想します。ローリング・ストーンは映画の本質に何も関係ないのでご注意を!

出会ってすぐなんとなくは打ち解ける雰囲気ではあるものの、デヴィッド・フォスター・ウォレスはそもそもインタビューで記事にされることがわかっているので、なかなか本音は出せず、自然なようで巧妙に取り繕った回答に終始する。その一方で、心の奥ではこの若者となんとか打ち解けて本音で語り合い、自分の思いを共有して彼に理解して欲しくて仕方がない。ここら辺のせめぎ合いの描き方が本当にリアルです。凡人な我々はインタビューを受けるようなシチュエーションはないかもしれませんが、こういった類の葛藤は日々感じているのではないでしょうか?

もう一つは、生きる目的についてですね。昔々の社会が豊かでなかった頃には、「毎日ご飯を食べて生きていくこと」自体が人生の最終目標であったわけですが、現代社会では平たく言えば「成功すること」が生きる目的になっています。ここら辺の会話も考えさせられますね。二人ともいわゆる「アメリカン・ドリーム」をほぼ叶えつつある状況にいるのですが、そこに疑問も感じています。モール・オブ・アメリカ、アクション映画やマクドナルドなどの描写が象徴的です。

重要なのはインタビューで二人が旅するのは1996年であり、2001年には9.11、その後の不景気からやや盛り返した後の2007年にバブル崩壊。そしてデヴィットが自殺し、主人公が回顧録を出版する現代はリーマンショックの最中で、伝統的なアメリカン・ドリームの終焉と重なります。本作を観ると、2010年以降にSNSやマインドフルネスなどが流行する背景もわかりみが深い~となりますよ。

そんなこんなで明日からいつもより少しだけ素直な気持ちで人と会話したくなる。会話劇・地味映画・考えさせる系がお好きな方はお試しあれ!
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