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人生はローリングストーンのFARGOのレビュー・感想・評価

人生はローリングストーン(2015年製作の映画)
4.6
【ローリングストーン誌の記者(デヴィッドリプスキー)が才気溢れる作家(デヴィッドFウォレス)への密着取材を行なった5日間の心の旅路を実話に基づいて描いた物語】

再鑑賞&再レビュー😎
好みは別れるかもしれませんが、個人的にベストムービー級の一本
本作は実際に存在した作家デヴィッドフォスターウォレスを題材にした《伝記ドラマ》となっています。また、その取材の際に録音テープに保存されていた台詞がそのまま役者の言葉になっている為非常に嘘の無い作品になっている事も魅力です🙂

【"人間"を探す5日間】

日本でこそ認知度の低い作家デヴィッドFウォレスですが、本国アメリカでは劇中語られる1000ページを越す大作『infinite jest』の影響で《知的文学者》というアイコンを抱えてしまい、そんな彼の複雑な苦悩が本作のキモとなっています。

取材を行う若手記者は《作家志望》のデヴィッドリプスキー。作家として第一線で活躍しているウォレスに憧れ密着取材を行うも旅を続けるにつれ《憧れていた人の理想の姿》と《出会ってからの現実の姿》とのギャップに困惑する心の動きを内省的ではあるものの丁寧に描かれていたと感じました。

“平凡でいたい”と願うウォレス
脚光に溺れる事を嫌い、他者から評判も気にしない。しかし、作家として成功した彼にとっては”それら”は金魚のフンの様に付いて回る。その結果、彼のファンにとって理想の存在である為に無意識のうちに他者を演じるようになる。

自分が自分でなくなる事の恐怖を過去に体験しているウォレスにとって、他者を演じる事程嫌悪する行動はほかに無いでしょう。

夢を諦め記者という職業に妥協したものの、作家になる夢を拭い切れないリプスキーと夢を実現し頂点に立ったが故の苦悩と孤独を抱えるウォレス
劇中2人の最後の会話、リプスキーの「多数から評価されてもなお満足できない?」という問いに対しウォレスの「俺みたいになりたいか?」という返答は我々人間にとって永遠に答えの出ない《究極の問い》ではないでしょうか

"好きな事で仕事をするのは大変"とよく言いますが"好きな事で仕事を出来たとしても大変"である事を本作は見事なまでに描き切っていると感じました🙂

【天才もまた、人間である。】

今作は《会話》がメインの作品です。加えて会話をするのは上記でも説明しました《作家&記者》である為少々難解になる部分もあるものの観ていて退屈になるところは一切ありません。
観た後に美しい余韻が残る魅力的な映画

人間の普遍的なあり方が描かれた傑作だと個人的には思います😊
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