フクイヒロシ

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

4.0
アイヒマンの後継者とは、すべての〝優秀な部下〟。
つまり組織内で上からの指示を受けて優秀な仕事をする人。
つまり大半の社会人。
大半の社会人がアイヒマンの後継者になり得るよ、というミルグラム実験のほとんど記録映画。


放置手紙調査法、六次の隔たり、代理人状態などの社会学好きにはとても美味しいワードもちゃんと説明しててくれて楽しい。

スタンレー教授が観客の方を向いてまるでインタビューに答えるかのように語るシーンが多い。

難しい内容を説明するのに効果的だってのもあるけど、こういういつも何かを客観的に考えている人はきっとまるでインタビュー受けているテイで仮想の誰かと対話をしながら自論を精査しているんだと思う。

だからあの演出はスタンレー教授の資質を示すものでもあるのかと。


全体的にとても抑えめで、ミルグラム実験に対する反論にも結構時間を割いていて公平な印象。

ミルグラム実験を拒絶する心理も理解できるが、むしろ「人間は簡単にアイヒマンになれる」という危機感を持っている方が倫理的な生き方ができると思う。

ピーター・サースガードとウィノナ・ライダーの魅力によって映画としてのおもしろさもプラスされてる。