みきちゃ

マイ・プレシャス・リストのみきちゃのレビュー・感想・評価

マイ・プレシャス・リスト(2016年製作の映画)
4.2
IQ85、19歳にして既にハーバード大卒、父の友人のセラピストとのセッション以外はほぼ引きこもり状態のキャリー。口が達者で生意気で、偏屈で頭が硬い。IQが高くて超絶ブックスマートではあるが、自分の心はわからない。大人びた部分と幼い部分がまじってちぐはぐしてる愛おしさ。

セラピストから出された課題リストをこなしていくことは、キャリーが自分自身の過去と向き合うことであり、リストを1つずつこなしていった未来には、バランスのとれた現在が待っている、はず。きっと。

人と触れ合って摩擦を繰り返すことは面倒で、たくさん傷付きもするけれど、成長へのてっとりばやい最短ルートではあるんだろう。答えはずっと自分の中にあって、そうやって研磨されることでやっと表に出てくるってことなのかもしれない。

いかにも本好きなキャリーが特に好きなのはサリンジャー。映画のなかにサリンジャー小説へのオマージュがいくつも見られた。彼の小説には道徳的潔癖症な登場人物が多くて、道徳的潔癖症は青春映画の醍醐味の1つ。飛び級により大人の世界を見るのが随分早まったキャリー。世の中の白と黒がハッキリしているうちはまだ子供で、グレーだらけの大人の社会はひどく汚れて矛盾して見えるもの。すんなり受け入れるのは難しい。キャリーは決して間違ってはいないんだけど、正論だけで大人社会を生き抜いていけるほどハートの強い人はなかなかいない。

……とか書いたけど全体的に軽やかで可愛くて、おしゃれな構図が多くて、NYが美しくて、前向きな気持ちにしてくれるあたたかい映画だった。素敵な伏線回収をありがとう♪
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