カニパン食べたい

みかんの丘のカニパン食べたいのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
5.0
戦争は人間性を奪う。でもこの映画では「戦争の顔」をしたふたりの男が小さな家の中で人間性を取り戻す。「異端の島」みたいな寓話なのか「ノー・マンズ・ランド」的やるせない人間劇場なのかどっちかだろうと思っていたけど違った。哀愁誘う枯れたBGMと、そんな場所にそんな国があることも知らなかったアブハジアの風景。停戦地帯となった小さな家。暖炉、スープ、お茶、朝の挨拶。イヴォ老人のどこか諦観を感じる風情がいい。仏教において諦観はけっしてネガティブなものではないので。
反戦映画ではあるかもしれないけど、主題はそこじゃないのかも。人間性を信じたい人におすすめ。些細なやりとりに心つかれて涙ぐむ。こういうふうに泣ける映画ってなかなかないよな。四人の俳優が素晴らしすぎた。

      ***

原題は「TANGERINES」。語感がイメージを誘うよいタイトル。邦題では「みかん/オレンジ」とせず「みかんの丘」としたのもよいと思う。 ネットを漁ったら、どこの国のだか分からないけど手榴弾がキービジュアルのポスターが。それはそうなんだけどなんか違う…。UNEXTのサムネ画像の、冬の寒さを感じる陽射しの中に座る何かを諦めたようなイヴォ老人、が映画の印象にぴったりだと思うんだけど