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みかんの丘のRのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
4.7
すっすばらしい! 家2軒の周辺で、4人だけの間に起こる、ほんの90分の小さなドラマのなかに、紛争と平和のすべてが凝縮されていた! 珠玉の傑作! 最初はちょっとだけ民族関係がややこしく見えたけど、以下の事だけ頭に入れておくと大体の流れが分かる。ドラマの舞台は、ロシアから独立したジョージアという国内で、ジョージアから独立したいと思ってるアブハジア人たちの自治区。ここでは、ジョージア人とアブハジア人の紛争が続いており、アブハジア側はチェチェン人の兵士を雇っている。で、ジョージアに住んでいたもうひとつの民族エストニア人には戦火を逃れるために、大半がヨーロッパの自国に戻って行ったんやけど、主人公の爺さんイヴォと、みかん畑を所有している隣人マルガスは、ジョージアに残っている。ある日、彼らの家の外で、ジョージア人とチェチェン人の撃ち合いが起こり、全員死んだかと思われたが、外に出てみるとそれぞれの側がひとりずつ重傷を負って生き残っていた、というとこから話が始まる。イヴォは彼らふたりを自宅で介抱しはじめます。ふたりとも徐々に回復して、イヴォを命の恩人と感謝し、敵同士お互いを憎み合うのいいが家の中では殺し合いをしないよう、とイヴォに約束させられる。エストニア人、ジョージア人、チェチェン人が一堂に会し、食事をくり返すうちに、彼らの憎悪の心に変化が起こり始める。争いの原因となっている国や民族の差異は、誰かが勝手に決めた概念的な枠組みでしかなく、取っ払ってしまいさえすれば、何の違いもない、同じ人間同士であるということが、非常に巧みな作劇を通して明確に伝わってくる。そして、生身の人間というベースに立ち返ったときに、民族同士の殺し合いがいかに無意味であるか、なのにいかに簡単に、そして無意味に、そこに巻き込まれてしまうかを鮮烈に浮かび上がらせる。その衝撃的なクライマックスのやるせなさといったらハンパじゃない。その後のエンディングは、一気に涙がボロボロこぼれ嗚咽を禁じ得なかった! 何てことだ! 何てことだ! イヴォは彼のすべてである最愛の娘がエストニアに帰ったにも関わらず、ジョージに居続けていた。その理由が、あまりにもやりきれない悲劇をきっかけに明かされます。からの、カセットテープ。うわああああああああ!!! 最高! 時々流れる物悲しげな音楽も、俳優さんたち四人も、最高だった! また見たい!
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