ハッとするようなきれいな映像があるわけもないし女性や少女も出てこない非常に男臭い作品だけど、とにかく脚本も演出も素晴らしくて、切なさや怒りなどなんとも言えない感情の余韻に浸ってしまう秀作でした。
舞台はグルジア紛争に巻き込まれたアブハジア自治共和国でのミカン農家。
ただ、みかんをつくり収穫してエストニアに帰り家族と出会いたいだけの農民イヴォとマルゴスにとってそれを汚す戦争自体が敵でしかない。
ジョージア軍だとかチェチェン軍だとかそれぞれどちらに着くだとかなんて全く無意味だ。
エストニア人の老人イヴォの言葉は哲学的でとても重みがあるからどれも、ドキッとされられて映画を見ていながら聖書や経典読んでいるような気持ちなりました。
何もかも削ぎ落として考えればアラーもキリストも農民も兵士もすべておなじ場所に立ってるし、誰もが戦争を望んでいない。
土地を守り、ただ仲間と食べて飲んで仕事をして笑い合うだけの営みがこんなにめ崇高なものだということをこの作品で改めて教えられた気がしました。
余計なものを全部削ぎ落として真正面から平和とはという部分にぶつかっていくシンプルさで恐らく低予算の作品だけど、そのエネルギーはスピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」にだって負けてないと思う。
恥ずかしながら気になってはいたものの勝手に小作だと思って後回しにしていたけど、とうもろこしの島と共にあと数日で配信が終わってしまうので慌てて鑑賞。
後回しにせず早く見ればよかったと思う個人的には埋もれて欲しくない作品です。