アズマロルヴァケル

みかんの丘のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
3.8
戦争映画の隠れた良作

ジョージア・アブバジア共和国のエストニア集落にて、小屋でみかんを入れるための木箱を作っている老人のイヴァの前にロシア側のチェチェン兵二人がいた。食料を求めたのでイヴァは一斤のパンを渡した。その際、家にあった孫娘の写真を二人のチェチェン兵が見たことで何故まだこの集落にいるかを訊ねたが、イヴァは多くを語らなかった。

ある日、イヴァは近くでチェチェン兵とジョージア兵が撃ち合いをしていることに気づいた。直ぐに隣にいたみかん畑を耕すマルゴスに状況を聞いたあと、この間チェチェン兵の一人、アハメドが倒れているのに気づき、イヴァはアハメドを暫くは家で介抱することにした。

夜、イヴァはマルゴスと共に撃ち合いで死んだアハメド以外の兵士を埋めてあげることにした。イヴァの指示で埋める場所を別々にしようとマルゴスがチェチェン兵の遺体を持ち上げようとしたその時、ジョージア兵の一人、ニカの頭が動き出したことに気づいた。彼はまだ生きていて、ニカもまたイヴァの家で介抱することにしたのだが、対立した者同士が二人もいることもあり、両者いがみ合うばかりであった。


100分前後でテンポがスロー。かつちょっと説明されていないところがありましたが、映画としてはもう充分に良く出来た良作。

実質、アブバジア紛争といった映画の背景を知らないとなかなか理解し難いのですが、対立した者同士とその二人を介抱する老人とのドラマという点では道徳的に考えさせられる内容でした。

説明しきっていない点としては何故イヴァがこの集落に残っているのか…どういった理由からニカがイヴァの孫娘の写真を見つめていたか…と考察しないといけない部分もあり、100通りの考えが幾つか出ると思いますが、それをこの映画のマイナスポイントにしてはいけないと思いまして「淵に立つ」のように人間の真意が描かれていない映画というのもひとつ映画としては面白いと言える。

で、後半ではイヴァとマルゴスとアハメドとニカがジャンボ焼き鳥のようなものを食べているのですが、これがまた飯テロと言わざるを得ないシーンで…こんがりと焼き上がった肉を食らってどんな味なのだろうかと想像するとなると観ててニヤけちゃいましたね。

ラストに関しては冷酷なチェチェン兵に歯向かうというかなんというか………アハメドとニカの結束力を描いたと言えば違うかもしれないが、とにかく残酷で衝撃的!!言えるとしたら冒頭からずっと登場したアハメドが人間としてイヴァと出会ったことで成長したことだろうか…。その点を入れて観てみるととても
ヒューマンドラマとして…戦争映画として見応えがあって素晴らしかったです。

ちなみに同じ戦争映画で「草原の実験」というのを昨年観たのですが、何故か地元のGEOやTSUTAYAでは在庫がなく、全部返品されていてあの時は泣きそうになりました。なのでこの映画も返品されずに万人に見てほしいと思いましたよ。