おくるみ

みかんの丘のおくるみのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
4.0
民族が違えども皆この世に生を受けた人間であり、怒り笑い泣く感情は同じだ。そのことが、ワイエスの絵画のような冷たく乾いた空気の中、パチパチと燃える薪ストーブの炎のようにじわじわと心に響いた。

「お金が欲しいのではなく育てたみかんが腐るのがイヤだ」と引取先をあたるマルゴスと、生を受けたのにわざわざ殺し合う戦争との対比に胸がつまる。

殺し合った民族の生き残り同士が仇を討つと息巻いていたが、最後にはその相手の援護を受け、自分の民族の別の部隊に銃を向ける。

違う民族同士が思想の違いで殺し合う戦争のむなしさ、意味のなさを、派手な戦争シーンでドンパチやるのではなく、最小人数で表現していて、見事だと思った。

戦争モノの作品は血のねっとりした感じが苦手だけれど、これは正視することができた。戦争モノではあるが、人種差別や生まれた地域など、血族という観点で見ることもできる。結局伝えたいことは同じであれば私はこちらを選びたい。いい作品!
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