emily

14の夜のemilyのレビュー・感想・評価

14の夜(2016年製作の映画)
3.5
1987年、たかし中三の夏休み、家には自宅謹慎の父親がいてだらしなく日々を過ごしてる。たかしは部活の日々だが、町に一軒だけあるレンタルビデオ屋「ワールド」でAV女優・よくしまる今日子のサイン会があると言う情報を仕入れ、まだみたことのない女性の胸に興奮をいだく。

夏景色、虫の鳴き声、夕日、滴る汗に青春が交差し、たかしの目線で家族を描写していく。時代をあざとく感じさせる小物や衣装、ビデオ、その世代に思春期を過ごしたものには懐かしい物たちであろう。大人になれば"くだらないこと"しかし14歳の少年たちにとってはそれがすべてで、それが大事。等身大の14歳の繊細な悩み、なんの取り柄もない、存在感のないスクールカーストで中の下に位置付けされる彼ら、そんな彼らが一つの目標により立ち上がる、そんなある一夜の出来事。

父親役の光石研の演技が絶品。ダサくてカッコ悪くて、でも夢を追ってて、誰より中二病で、青春してて、絶妙な会話の間をもたらし暑苦しく、面倒くさい男がみっともなくも愛おしい。父の母親が常にそばにいるので、いくつになっても大人になりきれない父親、少年たちと交差することで全編を通して滴る汗臭さがコミカルに転び良い温度感でラストまで引っ張ってくれる。

幻想は幻想でしかなくても、ほんの些細な事で人は変われる。一夜あれば人は変われる。くだらないことを必死に頑張る、ださくてカッコ悪くて、でも憎めない。男ってしょうもない、でもそのまっすぐさは心に響くものがある。


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