垂直落下式サミング

真昼の死闘の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

真昼の死闘(1970年製作の映画)
4.0
イーストウッドの今回の相棒は尼さん。互いに相手を利用しながらも何事も一枚上手なシスター・サラとの旅をコミカルに描いていて、マカロニウェスタンのころのダーティでバイオレントなイメージは無い。原題『Two Mules for Sister Sara』のとおり、ラバと頑固者とシスター・サラの冒険である。
イーストウッドはいつものごとくしかめっ面でアウトローの美学なんぞを語って格好つけているが、相棒(それも女)に危険なことをさせておいて自分は酔いつぶれるなど、かなりのダメ人間であり、その出で立ちは流れ者というよりマトモな職に就けない浮浪者のそれだ。
美しい自然をとらえた映画であり、荒野の太陽の眩しさにシャーリー・マクレーンの肌がジリジリ焼けついてしまいそう。しかし、この女、自身に好意を向ける男を利用しながら生き残る術は熟知しており、真面目なようで「わたしできなーい」「きゃーこわーい」といった具合に、わりと女を武器にあれこれ要求してくるし、都合の悪いことは「神が許します」の一言でぶったぎる。愛嬌と十字架の二天一流の使い手である。
私のお気に入りのシーンは、イーストウッドの前では淑やかに振る舞っていた彼女が、物陰に隠れてタバコを吸い本性を垣間見せるシーン。「ばかな男ね。良い子を演じるのも楽じゃないわ」とでもいいたげな仕草である。あれがメイド喫茶の控え室なのだ。