メタ壱

限界人口係数のメタ壱のレビュー・感想・評価

限界人口係数(1995年製作の映画)
3.4
人口が飽和状態に達し何かのタガが外れた東京で、主人公は謎の男との接触をきっかけ変化してゆく自分に恐怖を抱くが…というお話。

ニコニコ生放送の境界カメラチャンネルにて、西村喜廣監督のコメンタリーと共に鑑賞。

ぶつ切りのような編集とサイケデリックな画作りによって現実感を削ぎ落とした、まるで悪夢の中を彷徨っているかのような独特な世界観が観賞者の心に不安を与え、ある種の世紀末の様な物語の世界へと没入させる。

安定感を失った世界において主人公ははじめ自分の変化に恐怖するがある時点でそれを受け入れ始める。
それはまるで“ストレスと抑圧”を抱える個人または社会から、表裏一体の衝動である暴力と性をない混ぜにしたような欲動に身を委ねる事によって自らを逸脱・解放させようとしているかのよう。

そして主人公に起きた様な変化が世の中の人々に徐々に蔓延してゆきそれらが何食わぬ顔で世間に溶け込んだ時、一度社会の底は外れ内部から崩壊、その後、人のもつ再生本能によって新たな世界の再編成が始まる、そんな社会構造の死と再生を予感させる物語だと感じました。

ちなみに西村監督によると、『鉄男』に似ていると言われる事が多い本作ですが、当時監督は『鉄男』を観ていなかったそう。

自主制作で作られた作品には監督さんのむき出しの感性が表現される事が多いんじゃないかと思っているのですが、そういう意味においてこういったテイストの作品はその時代における映像監督の内面を描き出しやすい先鋭的表現の一つなのかもしれないなと感じました。
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