くりふ

ボンベイのくりふのレビュー・感想・評価

ボンベイ(1995年製作の映画)
3.5
【愛と無慈悲】

以前からみたかったが、少し前にひょいとツタヤ店頭に現れたのでレンタル。

1995年制作…もう20年以上前ですか。旧さは感じますが、生々しさは消えず、描かれるヒンズー対イスラムの宗教対立も…リアルタイムで続行中…。

本作で扱う宗派暴動に対する監督の立ち位置がよくわからなかった。あまり俯瞰できていないように思った。

発端となった「バーブリー・マスジド破壊事件」は1992年に起きており、3年後ではまだ、これが限界だったのかな?また、これでもソフトな描き方なのでしょうね。制作現場への反対行為もあったようだし。

良くも悪くも、愛の映画でした。ヒンズーもイスラムも、自分らなりに神の愛は説いているのでしょう。が、愛は感情に過ぎません。私の神、への愛の裏切りは、憎しみにコロリと裏返る。そこに慈悲がなければ。

暴動が始まってから凄いシーンがあった。子供にガソリンぶっかけて、ヒンズーかイスラムかを問い詰める。異教徒だったら火をつけてしまう。コレ、本当にあったのでしょうね。

そういうことを平気でできてしまう。そんな人間を作り上げてしまう教えなのだということでしょう。実に無慈悲、無残なことです。

結局、物語的な解決はなかった。最後で監督の願いを表したのだろうことはわかりますが、希望ではなく虚しさをおぼえる。手をつないだところで何も変わらない。

昔々、谷村新司率いるアリスがはーんどいんはーんど!とか言ってコンサートで、皆さん手をつなぎましょう、とやっていたのを思い出した。アレと変わらないなあ。アリスは好きな楽曲多かったが、アレ知って子供ながらに一気に冷めたものだった。

主役カップルの愛はかなり即席でしたが(笑)、男が女に惹かれる一瞬は艶がありよかった。

雨季の嵐に禁忌の内を晒される女。ムスリムにとっては裸を見られるのと同義なのか?その仕草をほけーと見惚れる男。ここまでは納得だがその後はハテナ(笑)。嵐と共に盛り上がる愛は、その後の暴動の伏線ではありましたね。

本作で一番よかった愛の顕れは、とーちゃん愛。異教徒との結婚には断固反対していた双方の父が、暴動ともなればそう来るかと。ココは泣いて、笑った。しかし愛に泣けるピークはそこまでだった。

ヒロインのマニーシャー・コイララさんの親しみ易き端正美にずーっと見惚れました。はじめての逢引き、嵐の中を走るとある部位が、豊かなるそこが…揺れる、揺れる!一気に惹き込まれました(笑)。最近のインド映画だと抑えてしまうでしょうねきっと。

楽曲で面白かったのは、あれ?ブルガリアンヴォイス?という響きが聞こえるところ。確か、本作の暫く前に流行ったんじゃないか。

あと、やっぱりコレ、マイコーを意識しているよな、というダンスに懐かしさをおぼえました。

<2017.3.8記>
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