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ザッツ・エンタテインメントPART2のgogotakechangのレビュー・感想・評価

4.8
無人島に1本だけ映画を持って行くとすれば、迷った挙句にこの作品を選ぶだろう。
それってDVD?フィルム?電気は?映写機は?そもそもナゼ?なんて無粋なことは言いっこなし。とにかく"もしも"の話。

これまで見てきた作品の中で、もっと心に残っていたり衝撃的だったり、好きだったりするものはたくさんある。

しかし、無人島での生活の中で実際に映画に触れるとしたら、もっとも"映画的"だと考えているものを求めると思う。
もう生きていくので精一杯なんだから、ほんの2時間強だけ夢の中に浸ってアタマを休めたい、そう思うのではないか?

そう考えると、ワタシはこの作品に映画としての定義のほとんどを勝手に詰め込んでいるようだ。

フレッド・アステアもジーン・ケリー も、その黄金期をワタシは体験していない。

ビデオが普及する直前の80年代前半、クラシックフィルムのリバイバルブームが到来した。それまでいくら待っても#銀幕 でお目に掛かれなかったMGMのミュージカル映画やフォックス、パラマウントのスペクタクル映画がまるで新作ロードショーのようにドッと公開され始めた。『バンドワゴン』『雨に唄えば』『巴里のアメリカ人』『イースターパレード』etc...。これらは全てこのときに#映画館 へ足を運んで観たものだ。

総天然色、テクニカラー、シネマスコープ、とてつもない人数のエキストラ、突然始まる歌と踊り、中世のコスチューム、それまでアメリカン・ニューシネマやモノクロの人間ドラマ、あるいはSF超大作みたいな作品にしか触れることのなかったワタシはすぐさま目を奪われ心掴まれ、要するに虜になった。

中でもMGMミュージカルは異彩を放つ別格のジャンルだった。そこは完全にイリュージョンの世界。豪華なマジックを観ているようで、まさに"ザッツ・エンターテインメント"だった。

そのMGMミュージカルの"いいとこどり"がパート1~3まで続くこのシリーズ。

過去の名場面集で、しかもそんな、作品の切り取り継ぎはぎだというのに成立し、かつオモシロい、イヤ最高なのである。

流れるような浮かぶような、まるでアイスダンスのように、それとなく物凄いアステアと、五輪の体操競技のように変幻自在でアクロバチックなジーンケリー。

この2人が、『パート2』ではホストとなって共演し、あろうことか一緒にダンスまで踊っている。しかも結構ガチで気合入っている。

それはあたかも、唯一の共演作品『ジークフェルドフォーリーズ』の続きを見ているかのようだ。

ワタシはこのシリーズを観るたびに、古き良き"過去の遺物"ではなく、常に新しい"エバーグリーン"として受け止めてしまっている。

最後にアステアとジーン・ケリーが握手を交わす笑顔が、ワタシはうれしくてたまらない。
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