ゆう

スター・ウォーズ/最後のジェダイのゆうのレビュー・感想・評価

3.5
 ネタバレを避けるようにしても、それは不可能なことだと思うので、今作から離れた場所から切り込んでいきたいと思います。

 最近、北方『水滸伝』を読んでいまして、眠れない夜が続いています。あまりにも堕落した世を変えるために立ち上がる男たちの話なのですが、彼らのリーダーには宋江と晁蓋がいます。ある場面で晁蓋は「俺は前線に出て行く」と主張するのですが、彼を心の拠り所とし、憧れを抱く部下たちからは反対されます。彼が死ぬことを恐れたからです。しかし、晁蓋は人の上に立つのは、皆の尊敬を集める立場にいるのは、単に巡り合わせで、自分が死ねば宋江、宋江が死ねば代わりの者と巡ってきたものにとりつかれた男がその立場に立つというようなことを言います。
 
 結局今作は同じことだと思うのです。レイの出自、星空を眺める少年。血脈だったり、才能が選ばれし者をつくりあげるのではなく、巡り合わせで選ばれた人間が選ばれし者になる。これががテーマだと思うのです。

 デルトロやルークの語るフォース。これらが提示するものは善と悪は明確に区別できるものではないということです。それらは互いに人間の心の中で入り乱れるわけで、バランスが重要になる。このことも度々言及されます。

 監督の一番やりたかったことは、今までのSWシリーズのような選ばれし一人の物語ではなく、水滸伝のようにいろんな人たちが力を出し合い、戦い、散っていく。これが肝だと思いますが、やりたいことや、制作サイドから求められていたことがたくさんあったのでしょう。善をもって悪を制すわけではなく、そのバランスが重要であること。コメディ要素を入れること。かわいい新キャラを登場させること。いろんなことがごちゃまぜになって、乱雑な印象を受けました。

  お馴染みの始まり、美しい戦闘シーン、懐かしい師弟。胸を熱くさせるものは確実にありました。面白かったです。しかし、一番監督の伝えたかったことは十分伝わりましたが、鑑賞後それが心に残り、考え続けるということよりも、結局言いたかったことはこれでいいんだよねという疑問が残ってしまうのです。
ゆう

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