ユンファ

スター・ウォーズ/最後のジェダイのユンファのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

もしも「スター・ウォーズ」でなかったら、予告が公開される度に世界中が熱狂したりしない。
もしも「スター・ウォーズ」でなかったら、マーク・ハミルが映るだけで雷鳴のような拍手なんて起こらない。
もしも「スター・ウォーズ」でなかったら、日劇前夜祭のチケットを買う為に12時間も並ばない。
「スター・ウォーズ」はファンにとって本当に本当に大切な伝説であり、神話だ。もはや映画という枠組みにはおさまらない。
「最後のジェダイ」は、僕らの愛して止まない伝説に終止符を打った。

我らがマスター・ヨーダは、伝説のジェダイの書を指一本でいとも簡単に燃やしてしまう。パンフレットには6冊とあるが、7〜8冊あるようにも見える。この違いは実に重要だ。言うまでもなく、ジェダイの書とは「スター・ウォーズ」という神話そのもののメタファーであるから。6冊にせよ、7冊にせよ、あの場面が僕らの愛した「スター・ウォーズ」が終わり、次世代へと物語が移っていくことを示唆しているのは明白だ。
「最後のジェダイ」には看過しがたいプロットの穴が山ほどあるが、「スター・ウォーズ」の伝統を受け継ぎながらも、自分の創りたいものを創る監督の気概を感じる。

「スター・ウォーズ」は英雄譚だ。アナキンはフォースに選ばれた特別な存在であり、ルークやレイアもまたその血統を継いでいる。「スター・ウォーズ」は選ばれた一部の英雄と、彼らを助けまた導く凡人たち(その代表がハン・ソロ)の物語だった。
対してライアン・ジョンソンが語るのは、血統を継ぐはずだった英雄(カイロ・レン)に立ち向かう凡人たちの物語だ。
「君は誰だ?」
「フォースの覚醒」から繰り返された問いかけの答えは、「何者でもない」だ。
レイもフィンもローズもポーもホルドもDJもハックスもファズマも、何者でもない凡人に過ぎない。
けれど思い出してほしい。40年前、沈みゆく二つの太陽を見つめるルーク・スカイウォーカーは何者でもなかった。「帝国の逆襲」において、「私がお前の父親だ」と告げられた瞬間、ルークは自身が英雄の血を継ぐ者であることに気づき、「スター・ウォーズ」は英雄譚に、神話になった。
「最後のジェダイ」は、新たな主人公レイに「お前は何者でもない」と告げることで、「スター・ウォーズ」という神話を、神話であることから解放する。
伝説の英雄ルーク・スカイウォーカーが、再び二つの太陽を見つめて逝くその刹那、彼は英雄の呪縛から解き放たれ、40年前の何者でもなかったルーク・スカイウォーカーへと還っていく。
そして伝説は終わった。

けれどクライマックスで、どこへ行くとも知れぬファルコンの内部には、燃えたはずのジェダイの書が残されているように見える。
何者でもない僕らは、何者にでもなれる可能性を秘めている。
今再び、名もなき少年が星空を見上げる。
神話の誕生から40年。僕ら凡人たちの冒険はまだ、始まったばかりだ。
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
ユンファ

ユンファ