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スター・ウォーズ/最後のジェダイの小のレビュー・感想・評価

3.7
『スター・ウォーズ』シリーズは一応全作目は通しているけれど、映画に深く興味を持ち始めて以降に見たのはエピソード7からで、それまではなんとなく見ただけ。だから物語について真剣に考えたことはなかった。

本作についても、鑑賞直後は前作同様、メカニックな部分や世界観に新しさはなく、相変わらずドンパチやってるなーって思っただけで、凄く面白いという感じはなかった。でも、巷にたくさんあふれる解釈を読み、よくよく考えてみると、今回思い切った路線転換した? 次回どうなるのだろう? とちょっと先行きが楽しみになってきた。

スター・ウォーズ(SW)の生みの親、ジョージ・ルーカスは2012年に自身の映画製作会社「ルーカスフィルム」とSWの全権利をディズニーに売却。前作エピソード7の「フォースの覚醒」からはディズニーの映画となった。

ルーカスはその「フォースの覚醒」について酷評している(本作については「見事な出来」「美しく仕上がっている」などと言っているらしいけれど…)。
(http://www.sankei.com/entertainments/news/160103/ent1601030008-n1.html)

その中で気になったのが次の言葉。<「私はSWを単なるSF映画だとは思っていない。SWはメロドラマであり、すべての家族の問題を描いているんだ。ところがディズニーは(SWを)メロドラマではなく、ファンを喜ばせるためのレトロ(懐古趣味)なSF作品にしようとしていた…」>

アメリカの映画でしばしば感じるのだけれど、ルーカスもまた家族という価値観を絶対なものに位置づけ、そこにカタルシスを求めているような気がする。それは多くの人に受け入れやすい価値観であり、SWのストーリーにおける根幹なのだろうと思う。

この「メロドラマ・家族」路線は、前作でははっきりとは否定されていないと思うけれど、本作では大きく揺らいでいる感じがする。外側に絶対を求めるのではなく、自己の内面を探求し、境界線がないことに気づくみたいな方向に進むような…。とすれば『ホドロフスキーのDUNE』で語られる「DUNE」のオチみたいなことを想像してしまう。

でも個人的には、本作で路線転換したように見せて、次回作ではやはり「メロドラマ・家族」路線に戻すのではないか、と勘ぐっている。

ルーカスはSWをディズニーに売却した理由について、<高齢の自分ひとりではSWの物語のけじめが付けられず、もともと計画していた残りの3部作についても完成に10年はかかることから売却を決意したと説明>。

<しかし売却後、その新3部作の始まりとなるエピソード7については、ディズニーが自分のアイデアを却下するなど、互いの方針が違ったため、SWから手を引き「互いが互いの道を行くことになった」と述懐>している。

多分、ルーカスはSWをエピソード9で終わりにしたかったのだろうけれど、こんなドル箱コンテンツを資本の権化ディズニーがあっさり終わらせるはずがない。

だからエピソード9から先も製作できるようルーカスのアイディアを却下したのではないだろうか。ただ、SWの根幹たる「メロドラマ・家族」路線の転換は、大人から子供まで楽しめる、即ちたくさんの利益が見込めるSWという観点からすると個人的には疑問なので、次回作では、物語としては「えーっ、そうだったの~」みたいなことになるのではないか、と。

ところで、ルーカスが「フォースの覚醒」を批判した記事を読むと『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』を思い出す。実話に基づく物語で、マクドナルド兄弟が発明した革新的なハンバーガーシステムをシェイクミキサーのセールスマン、レイ・クロックがフランチャイズビジネスで拡大し、一大ハンバーガー帝国を築き上げていく。

しかし、利益を追求するレイ・クロックと商品・サービスの品質を重視するマクドナルド兄弟は対立し、資本に勝るレイ・クロックによってマクドナルド兄弟はその名前だけ残し消えていく…。

SWの製作会社「ルーカスフィルム」として名前だけは残るジョージ・ルーカスだけれど、エピソード7以降のSWは彼の“子供”ではない。もはやSWに作家性はなくなり、たくさん儲かるにはどうしたら良いかが第一になってしまった…、という予感が確信に変わるのかどうか、次回作がちょっと楽しみ。

●物語(50%×3.5):1.75
・次回作に期待膨らむ展開。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・確かに美しいけれど、革新性は乏しい。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・やっぱり音楽と映像は良い。
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