はる

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのはるのレビュー・感想・評価

4.2
いろんな意味で大反響のあった前作を受けての今作。観る前に緊張してしまう映画は『スターウォーズ』しかありえない。「受け入れること」で楽しむのがこのサーガなのだという考え方はプリクエルで獲得した。だからシークエルの有り様も同様である、というスタンスで初日に観たものについて考えたことなどをとりあえずまとめたい。

ではネタバレです。


オープニング・クロールでの「死者の口が開いた!」でこちらの口も開くことになるが、予告編で匂わせていたことではあるので「まあいいや」となる。パルパティーンは辺境に隠れて新たな軍団を創設していた。それが「ファイナルオーダー」ということで、第三極が登場した。これはガンダムを観てきた層には、エウーゴ、ティターンズ、ネオジオンという構図のあった『Zガンダム』を思い出させる。それはEP7ですでに感じていたことだ。今回この第三極が生じることでバランスがどうなるのか、というのはまず気になったが、普通に考えると2対1になることは想像できる。
冒頭でいきなりカイロが荒ぶっていた惑星はあのムスタファーで、無慈悲に切り倒されていたのは入植者でシスを信奉するカルトだった、ということはパンフレットを読んで知る。観ている間も、カイロがパルパティーンに対して敵愾心を抱いていることの意味を考えていた。彼はスノークに取り込まれたのと同時に「親や師匠から見捨てられた(と思い込んでいる)」という側面があり、シスに堕ちたということではなかった。そういう彼だから父性や母性を求めることは自然なことだが、どうしても埋められないことの苛立ちが怒りを駆り立てていたのだろう。
これまでも示されていたことではあるが、暗黒面というのは孤立や孤独を感じたときに陥りやすい。

これは『Frozen 2』でも感じたが、エルサの独断と孤立をアナは許さなかった。今作もレイにはフィンやポーがサポート役として付いていた。(付きまとった、とはあえて言わない)
団結や寛容が大切なのだというメッセージを今作からは強く感じたし、実はオリジナルでもその流れはあったと思う。ただしルークは自分で苦難を抱え続けた。そんな彼の先に何があったかは既に知るところ。
レイはルークのようにはならない、かどうかはともかく、ベンのファミリーネームを名乗って晴れやかな表情を見せたことは希望を感じさせる。ルークやレイアにとっての意味合いとは違い、レイには「受け継ぐべきもの」となっている。だから彼女もジェダイとして次代に繋いでいくことだろう。
あのベンとの衝撃的なキスシーンがあるだけでなく、レイアやルークとの繋がりを深めたレイがスカイウォーカーを名乗ることに「謎の感動」があった。それは、レイが(ベンもそうだが)強く求めていた家族の絆というものに繋がっている。彼女がスカイウォーカー家の面々に触れていた時間は、とりわけレイアとのものはかけがえの無いもので、ある意味疑似家族ものと言える。特に「父性の欠如」というものはこのサーガの要素として重要かと感じた。アナキン、ルーク、ベンがどのように育ったか。
そこでブレなかったレイが今作で力強く躍動していたことが本当に良かったし、前作で物足りなかったからこその今作だったとあえて言っておきたい。
演技としてもデイジー・リドリーの成長を感じたし、他の女性キャラ達の活躍も良かった。とにかくハイテンポでタメることなく突っ走る構成だったけど、それはJJの持ち味の一つではある。彼らしい敵のインフレーションも笑えて良かった。あと最終決戦の作戦会議でホルド提督の特攻と同様の作戦の提案がされたときに「あれは(成功率は)万に一つだ」とサラリと言及があったのも「そういうことになったか」と個人的には面白がっていた。

前作で民衆たちはレジスタンスの呼びかけに応じず、確実に銀河の闇は増した。その彼らが立ち上がったことで邪悪なものたちを封じることができた、ということになった。
そしてフォースを汎銀河的なものとして、血統から切り離した。そしてレイはスカイウォーカーを名乗ることに。つまり今作のタイトルである「TROS」のスカイウォーカーは血ではなく概念やジェダイ、フォース、善なるもの、ということになるだろう。「夜明け」とした邦題はなかなかのものになったと思う。

シークエルは明らかにプリクエルへのカウンターで、オリジナルへの憧れ。オリジナルの面々の存在感をあらためて知る三部作になったし、やはりレイアのシーンとチューイの反応は泣けてしまった。問題のキスシーンには思わず声が出そうになったが「まあいいや」の精神で受け入れる。ただし気になったのは「どういうプランであの二人は演っていたのか」ということ。JJにしては珍しくタメのある流れで、あれはレイから近づけていったと思う。決まっていたことなのか、もしくは「二人に委ねられて」いたのかもしれない。

とりあえず完結はした。とはいえ帝国(ディズニー)は今後もSWを拡大していくことになる。しかしそれはもう別の銀河のことと感じるだろう。それでもスペースオペラとしての魅力があればそれらを楽しむことにもなる。キリが無いので、とりあえずこの辺で。あと何回観るかな‥。
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