いずみたつや

ぼくとアールと彼女のさよならのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

主人公・グレッグが作る映画のパロディはどれも可愛らしいものばかりですが、映画が進むに連れて、実はそれは「自分と向き合うことを避けている」ことの表れなのではないかという問いが浮かび上がってきます。

何事にも本気にならず、波風を立てず生きてきたグレッグは、自分が作る作品もやはりオリジナルではなくパロディにならざるを得ないのではないでしょうか。

そんな彼が変わるキッカケとなるのが、白血病の女の子・レイチェルとの出会い。グレッグは彼女のために映画を撮ることを約束し、彼が撮る映画はこれまでの内容やテイスト、手法さえもまったく違ったものに変化していきます。

グレッグがレイチェルのために作る映画というのは、自分の考えや内面と向き合った象徴的なものです。これが本当に美しく、その愛おしさは尋常じゃありません。僕もカメラを触りたての小さい頃にストップモーションでいろいろ撮ってたのを思い出して、他人事ではないような気がしました。

その作品(思い)を受けとったレイチェル役のオリヴィア・クックの演技も本当に素晴らしいものがあります。

僕の強弁かもしれませんが、この時のレイチェルの顔にカラフルな光が反射される様子は『2001年宇宙の旅』のクライマックスに似ている気がして、つまりこれはレイチェルの内面=インナースペースへの旅を見せているのではないか、とも感じました(見直すとうーんやはり考え過ぎかとも思いましたが、でもレイチェルの内面を描いたものには間違いないです)。

"芸術"とは何か伝えたいものがあり、それを誰かが受けとった瞬間に成立するんだなあと考えながら、涙が止まらなくなりました。

レイチェルのための作品は、誰にでも分かる作品ではないかもしれませんが、紛れもない"芸術"として実を結ぶのです。