おなべ

国際市場で逢いましょうのおなべのレビュー・感想・評価

国際市場で逢いましょう(2014年製作の映画)
3.8
御存知の方が殆どだと思うが、本作は韓国映画の歴代観客動員数第2位&第52回大鐘賞では最優秀作品賞を始め10部門を受賞した大ヒット韓国映画である。韓国が実際に歩んできた歴史を題材にしている事がその要因であると考えられるが、それに加え、人情が滲み出るような極めて熱い人間・人情ドラマが展開されている。

《ユン・ジェギュン》監督作品
釜山の繁華街“国際市場”にある商店街で「コップンの店」という雑貨屋を営んでいる老夫婦。その夫ドクスはひょんな事から過去の記憶が蘇り、今まで経験した想像を絶する過酷な人生を振り返る。その中で、1950年代から現在に至るまでの激動の時代と共にドクスの過去と現在が明らかになる。

《ファン・ジョンミン》の役者としての力量がこの作品に詰まっている。秀逸な脚本や演出は勿論だが、本作を語る上で彼の演技力は欠かせない。もはや演技とは感じさせない自然な演技に早々に感情移入してしまい、物語に深みを与えていた。《ファン・ジョンミン》が演じた主人公ドクスの貧しくも懸命に生きようとするその生き様と義侠心が、彼の壮絶な人生を通して心の琴線に触れるのを確かに実感した。


【以下ネタバレ含む】


◉本作に大きく関係する朝鮮戦争やベトナム戦争、出稼ぎ先での過酷な肉体労働や爆破テロなどはフィクションでは無く実際に起きた事で、その凄惨な過去の歴史を織り交ぜながら進むストーリーは否が応でも真に迫るものがあった。そんな中、微かな希望を胸に死に物狂いで奮闘したドクスが自らの人生を振り返り吐露した言葉、「こんな辛い体験を味わったのが子ども達でなくて本当に良かった」、底知れぬ人の良さを感じさせるこの台詞に心を打たれた。

◉家族の為に「夢」を諦めボロボロになりながらも必死で働き、他人であろうと無かろうと誰ふり構わず命を賭して助けるなんて、自分だったらまずできない。父親との口約束を数十年待ち続ける事も多分できない。奥さんがいるなら尚のこと。

本当は自分が一番辛いはずなのに愚痴や文句を一切垂れず、【お金】【重圧】【約束】【責任】【多くの人の想い】…“全て”を背負い、自らの人生を投げ捨て「人」の為に働き「人」を第一に考え「人」の為に行動する。

【人情】の神髄がここに在ると思う。
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