ハル

リトル・ボーイ 小さなボクと戦争のハルのレビュー・感想・評価

2.8
映画の感想を書くときに、極力、自分の思想・信条を絡めないように気をつけている。戦争を題材にした映画だったら尚の事である。ただ、この作品については、申し訳ないけど、違和感が残る。

まず、タイトルが、奇しくも、広島に投下された原子爆弾と同じ「リトルボーイ」である。この時点で日本人に喧嘩を売っとるな、なめとんのかと思っていたら、案の定、原爆投下の件が出てきた。

少年は街に住む司祭のおっさんの言葉に感化されて、自分の中に不思議な力があると勘違いしている。その彼が日本の方角へ向けて念を込めると、遥か極東の島国で街が一つ消滅した。投下された爆弾の名が奇しくも「リトルボーイ」だったことから、人々はこれをあたかも神の奇跡・神の裁きであるかのように讃えた。この冗談のような展開に神経を逆撫でされた日本人は私だけではあるまい。さらにムカつくのは、原爆投下を描いたくらいだから何か反省の色を出してくるのと思いきや、何のフォローもせずにさらっと流してしまった点である。そこはやはりアメリカ人の視点だからなのだろう、「原爆投下は戦争の早期終結のためにはやむを得なかった」という勝者の歴史観が反映されているように感じた。

尤も、作品の出来自体は、視聴者の心の琴線に触れるように無難に仕上がっている。

ペッパー君が父親を戦場から連れ戻そうと奮闘する健気な姿とか、日系人との心温まる交流だとか、心の優しい方々は涙で頬を濡らすに違いない。

ちなみに私は、この原爆の件もあって、その後の展開に全くついていけなかった。違和感と言おうか、正義感と言おうか、そういうものが邪魔をして、何もかもが歪んで見えてしまった。
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