荒野の狼

スティーブ・ジョブズの荒野の狼のレビュー・感想・評価

スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)
5.0
アップル社の共同設立者の一人であるスティーブ・ジョブズの1984年から1998年の14年間に起こった三つの出来事を描く122分の映画。ジョブズが、家庭人として企業人として、どういった人物であったか知りたい人にはお勧めの映画。
マイケル・ファスベンダーが演じるジョブズは、若いころから豪腕、大胆で柔軟なところがなく、会社ではリーダーシップをとるというより、独裁者に近い。ビジネスマンとしての格好良さはあるのだが、この人物がどうして業界で成功できたのか、この人物の才能は何であるかといった点は、この映画では描かれていない。
ジョブズはコンピュータのプログラムすら書けないのだが、小澤征爾の“一つの楽器ではなく、オーケストラを演奏する”という言葉を引用して、次のように言わしめている。ジョブズは“一つのコンピュータプログラムではなく、プロジェクトを演奏する”オーガナイザーであると。しかし、この人物ほど、人間関係の機微に疎い人物はなく、サポート役のケイト・ウィンスレットはじめ周囲の人の我慢が、辛うじてチームを保たせている。ところが、ジョブズは、その長年のチームメンバーの功績すらも称えようとしない。
一方、私生活では、自分の娘を認知せず、その母親には低額の養育費しか払わない。ラスト近くで、自分の性格の欠陥を家庭人として企業人として、少しだけ気づいたような描き方。
要するに、この映画ではジョブズがコンピュータの未来に対する理想などを語る部分を織り込みながら、ジョブズを、ほとんど良いところのないような人物として描いている。ところが、映画の視聴者には、何故かジョブズに好感を持ってしまう。そんな不思議なキャラクターをマイケル・ファスベンダーが好演。
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