垂直落下式サミング

光あれの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

光あれ(1946年製作の映画)
4.0
第二次大戦後、PTSDを患う帰還兵たちのセラピーに赴いて、彼等の実態を撮影したドキュメンタリー。
アメリカ政府の依頼で製作されたのに、撮される者たちの実態があまりに救いがなく、こんなものをみせては兵士志願者が減ってしまうと、劇場公開されず長らく封印されていた作品だ。ネットフリックスに入ったのは、この作品をみるため。
冒頭のセラピーの場面、独白しながら泣き崩れるもの、常に目を泳がせて視線を合わせようとしないもの、作り物の演技ように表情を固めているもの、各人トラウマのあり方は様々だが、彼等の被害者性と加害者性の両方の側面を、しっかりとこちら側に意識させる構成。
国家が勝とうが負けようが関係なく、戦闘を経験した当事者たちにはしっかりと傷が刻まれるのだという、当たり前がカメラに撮られている。さすがに写せる程度のものしか見せてはいないのだろうが、それにしても作為的な演技、いわゆる雑なヤラセが入り込む不用意さは、ヤコペッティ登場以前の記録ドキュメンタリーな感じ。
手際のよい催眠セラピーで明らかになる人の脆さ弱さ単純さ。ラストで何かが克服されたように終わっているが、治るから安心しろなんて無責任だし、最低限のバックアップだけして社会生活に放り出しているようにみえるのは、私が左寄りだからか。
戦勝国ですらこんなろくでもないことになるのだから、戦争をするくらいなら負けていいとまで思わせる。偉大なるジョン・ヒューストンの左翼プロパガンダ映画。