柏エシディシ

トレジャーハンター・クミコの柏エシディシのレビュー・感想・評価

2.0
ファーゴを観直したので、塩漬けしていたコチラも。

もともと「本当にあった奇妙な物語」の体でありながら複数の事実をミックスした"フィクション"である「ファーゴ」にオマージュした、こちらも事実をベースにした架空の物語であるという構成。
ファーゴ本編でも象徴的に登場する"ポール・バニヤン"の精神にも繋がる、虚構が現実を喰っていく映画。
なんだろうけれど、酷薄な現実から逃避する「アリス」的な物語という定型からは抜け切らず、濃淡の薄いストーリテリングと共感を寄せる魅力に乏しい菊地凛子のヒロイン像もあって、作品としての厚みに欠ける様に思う。
"赤のフード"や"うさぎ"というメタファーも、あまりにも安直。正直に過ぎて、面白みがない。

前半パートの日本描写は、「異邦人の目から見た日本」という視点の違和感自体が少なく見やすく感心もするのだが、日本人たる自分の立場からすると、その分面白みに欠けるというか、一面的な描き方で物足りなくも感じる。
日本の、特に女性が社外的に感じる抑圧という主題も、その重要性は理解しつつも、映画として語るにあたってはスクリーン越しにでもその切実さを迫ってくるような工夫も説得力も本作においてはいまひとつに感じた。

「グリーンルーム」や「20センチュリーウーマン」などでも印象的な仕事をしていたショーン・ポーターの撮影は、前半と後半とそれぞれ違った意味での荒涼とした風景を捉えていて見応えはある。
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