けんたろう

エンドレス・ポエトリーのけんたろうのレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
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ちんちんとおっぱいが荒れ狂ふおはなし。


おゝ……表現が楽しい! まさかホドロフスキイが此んなにも愉快でユウモラスな表現をするなんて!
とは云へ、彼れの世界観が失はれたわけではない。寧ろ特有の"異形"は依然として在る。たゞ今作に於いては、其の"異形"が我々民衆との距離を縮めて来てくれてゐるのだ。即ち小人、黒子、独裁者、或るいは衆目、狂人、芸術家、果ては変はらず日常を奏づるマヽ等々。果たして彼れらが此んなにも可笑しかつたことは、今迄に一度でも在つたらうか! いや──在つたかも知れない。ご免なさい。

むろん可笑しいだけではない。其の世界観、即ち彼れの眼に映る此の世界が、静と動、遅と速、無色と有色、其れから無機と有機に依りて、此れでもかと云はんばかりに描写せられてゐる。兎角、凄い表現のオンパレイド。
「勇敢に成れ! 一緒に笑へ!」
翼を得た彼れの、巣との訣別、巣からの解放、即ち自由!
「総べては美しい!」
祝祭、即ち圧倒的な表現! はあ。劇場で観たかつたの一言に尽きる。

随分後回しにしてしまつたが、もちろん肝心のプロツトも好い。社会への反抗と自らの肯定に勤しんだ、悪どき青春の日々。友や恋ひ人との悲しき別れ。環境ではなく、魂に従うた詩人の悲喜交々。然うして矢張りホドロフスキイである。後悔と魂の救済。
稚拙な表現に成つてしまひ申し訳ないが、大好きである。ホドロフスキイ爺さん、俺れは貴方が大好きである。初めて『ホーリー・マウンテン』を観た時分には、まさか此んなことに成るなど思ひもしなかつた。とにかく好きである。
因みにホドロフス爺さん、今年で御年九十三なんだとか。お体、お気を附けて。