改名した三島こねこ

エンドレス・ポエトリーの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
3.5
<概説>

『リアリティのダンス』の続編となるアレハンドロ・ホドロフスキーの自伝映画。父との確執を乗り越えた巨匠は、芸術家達と交流したありし日を想起する。

<感想>

ホドロフスキー監督の世界観が前作に続いて炸裂していましたね。原色によって覆われるアイテムが不規則に陳列され、独自の幻想世界が作品を覆っています。

しかし本作はそれほどハマらなくて不思議でした。こういった狂想の世界は大好物なのですが、なぜかその趣味と合致せず。何故だろうと首をひねればその理由って案外明白。

ホドロフスキー監督の世界観って、言ってしまえば普遍的な原風景をそのまま画面に落とし込んでいるイメージなんです。世界をその意味によって文節化する以前のCHAOSの世界というか。

その世界は混沌としていながらに実は秩序的で、完全なる意味不明性は存在しない。物語の羅列もきちんと明瞭で、それぞれに暗示するところを配列すればきちんと作品の意味が判明する。

一方で私の好きな寺山修司の『田園に死す』。アレはホドロフスキーの影響をモロに受けています。しかしながらその中には日本的な原風景という観客の取捨選択を行う要素があるのですよね。

けっして完全無欠の普遍ではなくて、どこか欠落した要素のある夢想図。その欠落にこそ私は惹かれるのじゃないかなと内省した次第。

いい作品ではあるのですが、もうすこし文脈を混濁させてもよかったかなと思いますね。