TAKU

第三の選択/UFOと米ソ宇宙開発の陰謀!人類火星移送計画が極秘裡にすすめられている!?のTAKUのレビュー・感想・評価

5.0
世界各国で相次いで起きた科学者失踪事件。その裏には人類火星移住計画の陰謀があったという、エイプリルフール放送用に制作されたフェイクドキュメンタリー番組。

つまり、作品の中で語られていることは全部嘘。しかし、今もテレビや雑誌などで存在している宇宙オカルトネタのほとんどが、約40年前に作られた本作の中にある。では、なぜ本作がここまで語り継がれるような作品になったのだろうか。

まず、火星への移住や秘密を知る者たちが謎の組織によって姿を消されたなんて内容は、聞くだに荒唐無稽としか言いようがない。なので、仮に本作が物語形式のドラマとして描かれていたら、「よくできたストーリーだな」で終わってしまい、それ程話題にもならなかっただろう。だが、本作がクレバーだったのは、ドキュメンタリー番組風に、つまりモキュメンタリーとして製作したことだ。

放送から約40年経ち、さらにモキュメンタリーというスタイルが一般的になった現在の視点で本作を観たなら、「これは本当のことだ」とは思わないかもしれない。しかし、当時はインターネットなどもなく情報収集の手段も限られていた。テレビから発信される情報は“信頼できるもの”として認識されていただろうし、加えて番組の構成は完全にドキュメンタリーだ。ピーター・ワトキンス監督の『ウォー・ゲーム』や『懲罰大陸★USA』というモキュメンタリー形式の映画はあったものの、あの頃はフェイクドキュメンタリーという手法はあまり普及していなかった。

なので、映画監督オーソン・ウェルズが1938年にラジオで火星人が襲来したというのを放送したことで多くの聴取者が本当の事だと信じてパニックになった事件のように、『第3の選択』も本編で描かれた内容を“真実”として人々に衝撃を与える余地は十分にあっただろう。

そして、本作がカルト的な人気を博している理由として、現在の状況を預言していることが挙げられるだろう。劇中で地球温暖化について言及する場面がある。今でこそ当たり前のように認識されている問題だが、イギリスで放送された当時はごく一部で研究がなされているのみだった。その他にも、本作のキーポイントとなる「火星への人類移住」も、もはや“陰謀論”ではなく、人類の新たな取り組みとして進んでいる。

話は変わるが、この映画に影響力を受けたと公言する人で、Jホラーの先駆者である鶴田法男がいる。思い返せば、Jホラーの起源である『邪願霊』やOVシリーズ『本当にあった呪いのビデオ』といったモキュメンタリー形式のホラー作品が作られてきた。また、鶴田法男と『邪願霊』の監督石井てるよしの対談で、 『邪願霊』は『第3の選択』に影響を受けて作られたと、石井てるよしは語っていた。

以上のように、現実の世界だけでなく日本のホラー映画にも影響を与えたという事実が、この『第3の選択』が映画として計り知れない力を持っていることの証明になっているのかもしれない。