よしまる

我が道を往くのよしまるのレビュー・感想・評価

我が道を往く(1944年製作の映画)
3.9
 人情派の名手として知られるレオマッケリー監督を初体験。本作もアカデミー7部門総ナメながら、まだまだ知らない映画がいっぱいあるなぁ😅

 ビングクロスビーが主役とのことで、どんなふうに歌が絡むのかと思っていたら、前半はサウンドオブミュージックだったw
 倒産?寸前の古ぼけた教会に派遣されてきた新任のクロスビー。神父らしからぬ身なりや言動で、破天荒な新米教師ものみたいなやつかと思ったけれど、それも違うw

 悪ガキどもを集めて聖歌隊に仕立てあげたり、貧乏な歌手の卵を世話したり(神父なので当然だが色恋沙汰とは無縁なのもいい)、お金の工面もさることながら、教会に集まる人々の暮らしぶりにまで影響与えてしまうほどの活躍、というか有能すぎてビビる。

 その一方で、教会を40年も守ってきた老神父のまあ酷いことwワガママで自己中、セコイしコスいし、そりゃ潰れるわ!てなもんだが、何故か憎めない。
 バリーフィッツジェラルドというアイルランドの俳優さんがアカデミー主演と助演のダブルノミネートという珍事をもたらしたことでも有名だそうで、主役を食うほどの存在感。クロスビーの頭からつま先まで出来杉な人物像に比べ、あまりに意固地なお爺ちゃんでなんだこいつと思いながらも
それこそが人間味に溢れ、共感してしまう。
 一般的には主人公がどこか欠陥を抱えていたり恵まれない境遇に遭ったりして共感を覚えるものだけれど、本作はそれがまったく逆。
 完全無欠のヒーローに対する期待や憧れも戦時という時代が求めたのかもしれない、でもそれ以上に、この老神父の、誰もが抱える悩み…経営難、承認欲求、親との確執、そうしたものへの対峙をまざまざと見せつけられ、それが本作のテーマとも言うべき「歌」によって昇華される。
 実に見事なプロットだ。

 そしてその証拠に、最後にはしっかり泣かされてしまう。なんて粋なラストシーン!
 ちょっと強引な気もするけれど、ねじ伏せるように畳み掛けて着地するエンディング、昔の映画独特の、観終わった瞬間の満足感が半端ない名作だった。バーグマンが出ているという前日譚、そして監督のほかの作品もぜひとも見てみたい。