RandB

The ショートフィルムズ/みんな、はじめはコドモだったのRandBのレビュー・感想・評価

3.0
最近、オムニバス映画にハマっており、鑑賞。

朝日放送の新社屋完成を記念して製作されたというオムニバス映画。
子供たちが将来に向けて明るい希望を持てるようにスタートした「こども未来プロジェクト(朝日放送)」のコンセプトフィルムと銘打っているが、実際のところは、どの作品にもかなりの作家性があらわれていた。
むしろ、現在でも活躍する実力派監督と実力派俳優のコラボレーションが興味深い作品。

というわけで、ここからは各作品のあらすじと感想。

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『展望台』
[阪本順治×佐藤浩市]
☆×2.5
東京タワーの最上階で置き去りにされてしまった少年。寂しさに暮れる彼だったが、そこで自殺しようとしている男と出会い...。

少年と佐藤浩市が繰り広げる一夜の交流。コテコテの関西弁の二人が疑似親子関係を築いていく様が独特ながらも特に印象に残らず。少年が展望台で立ちションをするシーンはシンプルに深い。


『TO THE FUTURE』
[井筒和幸×光石研]
☆×3.5
「怒らない大人になりなさい」と言いつつ、めちゃくちゃ怒る理不尽な小学校教師と生徒の話。笑

暴言や罵倒を吐き続けた挙げ句、生徒の机を思いっきりドロップキックする光石さんが驚異的に面白い。文句なしのベスト光石研映画。
ヤンチャ小学生がネズミを燃やすという"リアルネズミ花火"のシーンが強烈。
要するに、ちびっこヤンキー映画。


『イエスタデイ・ワンスモア』
[大森一樹×岸部一徳×佐藤隆太×高岡早紀]
☆×3.8
これは、時代劇のお伽話。浦島太郎の祖先であるお爺さんがもつ玉手箱。その効力で大人になった少年は貧乏生活を強いられる母を助けるため、お店の手伝いを始めるが...。

『ビッグ』を時代劇でオマージュするという荒技。しかし、それが意外と成立しているのが面白い。短編時代劇としての脚色が秀逸で、数分間ながらも『ビッグ』のメッセージが見事に凝縮されているのが見事。


『タガタメ』
[李正日×藤竜也×宮藤官九郎]
☆×3.9
知的障害の息子を持つ父。ある日、余命宣告を受けた彼は息子との心中を試みるが、そこに死神がやって来て...。

『悪人』や『怒り』の李正日監督らしく重苦しい雰囲気は一貫していた。レインボーに染色された服を着る"道化的な死神"役・宮藤官九郎の存在感は異色ではあるが、それでさえ、重厚な空気感によって多少かき消されていた。
少し捻られたラストシーンに、映画が持ち得る現実に対する救いを見た。

『ダイコン』
[崔洋一×小泉今日子×樹木希林×細野晴臣]
☆×2.6
ある一家のダイニングテーブルで起こる日常の決定的瞬間と家族の在り方。

タイトルは「ダイニングテーブルのコンテンポラリー」の略。「ダイニングテーブルを介した日常」という着目点が斬新で樹木希林と小泉今日子の自然な演技が光る作品。ただ、リアリティという面では評価できるが、映画として面白いかと問われれば微妙。
作中で小泉今日子が"一発屋のギャグ"を連呼するシーンがあるが、そこで持っているのがガラケーということも含め、10年間の歳月を思わぬところで意識させられた。(本作が作られたのは2009年)
家族の場が凍るシーンでの子役の台詞は秀逸すぎて、今回の短編集のハイライトといえる爆笑シーンだった。(あまりの名演のため、小泉今日子の素の笑いを見ることができる。笑)
ちなみに、あくまで"客演"である細野晴臣の演技には何も触れないのが賢明である。笑

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