JunIwaoka

ビッチハグのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ビッチハグ(2012年製作の映画)
4.8
(原題:Bitchkram / 英題:Bitch Hug)
2015.2.11 @ トーキョー・ノーザンライツ・フェスティバル 2015


10代の頃は自分のことを好きにはなれなかったな。いまだに好きかはわからないけれど、歳をとるごとに不完全な自分のことを、諦めにも近く認めてあげられたのかもしれない。10代の頃というのはとにかく他人と比べられて煩わしく、その中で不確かな自己の歯がゆさに悩み、居場所を見つけることに苦しむ。十数年前の自分に会って、"どうあっても君は君"なんて言われたみたいでなんか嬉しかった。

スウェーデンの田舎町で高校卒業を迎えるクリスティンは、NYで働くという夢を叶え窮屈な現実から逃れようとする。反感を買う彼女の奔放で傲慢、無責任な振る舞いは、欠陥だらけのパーソナリティへの反抗だけど、夢にかける情熱は誰にも邪魔されることのなく躍動する。その身勝手さも、はつらつさも瑞々しい若さで、無限の可能性は見ていてワクワクさせる。案の定、自業自得なアクシデントによって夢の芽を摘んだとき、現れたアンドレアに見つける心地よい居場所。年下なのに地に足がついて落ち着いているまったく反対な二人が、往生際悪く偽りのNY生活の中で知る等身大の自分。アンドレアに見せてもらった景色が嫌いなはずだった街に美しさを思えたように、やっと自分を受け入れていくクリスティン。アンドレアもそんな将来に疑いのないクリスティンよって、可能性を見出していき、二人はお互いの気持ちを知ることで人生がやっと前に動き出していく。
鮮やかな人物描写によって、ハシャイで笑い転げる二人に微笑み、すれ違ってしまう気持ちにヤキモキさせられる。その抑えられな感情がM83、Radio Dept、Jonsi、Florence and the The Machineの音楽が後押しもあってほんと他人事じゃない。
途中まで平凡な話だったのに、巧妙な演出とストーリー展開によってぐいぐいと引き込まれ、知らぬ間に胸がいっぱいになってしまった。"思う以上に刺激的で、意外なのが人生なんだから"というある大好きな映画のセリフを思い出してしまい、まだまだ諦めることはない!って思わず駆け出したくなるワンダフルな映画。

先日観た"Respire"とテーマはまったく同じなのに、こうも180度違う映画になるのは驚き。どちらも大好きなんだけどね。
JunIwaoka

JunIwaoka