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ヒトラー暗殺、13分の誤算のぼのごのレビュー・感想・評価

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015年製作の映画)
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ナチの台頭からやがて一色に染まるまでの流れが、ナチスを題材にしたどの映画を観ても薄ら寒くて恐ろしい。皆が一斉に同じ方向に向く構造は、現代でも国やナチス関係無く起こり得るから、こういう作品は戒めとしても意味がある。

熱狂の中で違和感を覚え悪い方向へ向かっていることに気付いたゲオルクは賢く先見の明があったけど、企てた暗殺計画はヒトラーが演説を早く切り上げたことによって失敗。仕掛けた爆弾によって死者7名負傷者63名の被害者を出し一般人まで傷付けてしまう。

火薬の量からそうした被害を生むことは予想していたろうし、身近にいる愛する人たちを放ってテロ行為に走ったことはとても称賛出来ることでは無いと思う。
紐解かれていく過去からゲオルクが平和と自由を愛していたことがわかるし、映画では彼の名誉を回復するための意図を感じたけど、個人的には寧ろその人物像と行為との落差が怖かった。直接映し出されないから見落としそうになるけど、爆破に巻き込まれた人たちやその家族はかなり悲惨。

意外だったのはゲオルクの家族や恋人が存命で関係者として連行されるのに、無事解放されていること。何でもかんでも問答無用という訳ではないらしい。尋問を担当したネーベが思想の良し悪しは置いておくにしても中々に聡明で、無駄な暴力を好んでいなかったのも関係あるのだろうか。ネーベは終戦間際にヒトラー暗殺に関与して絞首刑になるけど、時期的に見ても計算のようなものを何となく感じる。でも今となっては真実はもうわかりませんね。
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