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ヒトラー暗殺、13分の誤算のryodanのレビュー・感想・評価

ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015年製作の映画)
3.8
主人公は束縛を嫌う人だったのかな。社会に対して家族に対してあらゆる制度に対して。「個」というものを第一に考える人なのかな。今作は暗殺の過程やその後の尋問にほとんど重きを置かず、主人公が次第に生き辛くなる過程に沢山の時間を割いている。「この国はナチスが何とかしてくれる」という機運の下に抬頭したナチス。ゲルマン民族の誇りをプロパガンダに利用しユダヤ人を社会の敵と排除した。普通に生活していて、いきなり「今日からユダヤ人は非国民です」と言われて、はぁそうですかと何の疑問も持たずに生活できますか?と主人公を通して問われている気がしました。普通に人生を謳歌したいのに何故こうも同調しなくてはならないのか?映画館でのニュース映画に客の皆が羨望の眼差しでナチスを見る事に強烈な嫌悪感を抱いていた彼が印象的でした。人妻を愛して何が悪い?ユダヤ人を愛したドイツ女を何故ブタ呼ばわりしなきゃならない?何故「こんにちは」じゃなくて「ハイルヒトラー」なんだ?全員が同じ方向を向かなきゃいけないやり方はやはり健全ではない。それが2年3年5年となれば同じ方向を向けられない人達は生き辛いし、その取り締まりもどんどん厳しくなる。同調しただけの人々も次第に息苦しくなる。そのために社会の敵を作るのだ。そういう異変に素早く察知出来る人というのは実際にいる。それは政治家でも王族でも貴族でもない。我々普通の市民なのだ。
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