小一郎

黄金のアデーレ 名画の帰還の小一郎のレビュー・感想・評価

4.0
鑑賞後、真っ先に思い出した映画があった。今年(2015年)10月にみた、『顔のないヒトラーたち』だ。共通するのは、過去のナチスの行為と向き合ったうえで前に進もうとする人々と、過去に目をつぶり、何事もなかったかのように平凡に生きようとする人々との対立だ。

普通に考えて、過去を見つめ、誰かの過ちを責めるようなことをするのは嫌なものだ。一方、それに比べ、過去は振り返らず、仲良く過ごした方がはるかに楽だ。”大人になる”ってこういうことだと諭されたりするかもしれない。

しかし、過去から目を背けてしまうと、心身ともに健やかに生きられない、と思う。後悔や罪悪感を無意識の世界に押し込めても、それはやがて心身をむしばんでいく。悔いなく、よく生きるためには、何よりも、最低限、過去をしっかりと認識することが是非とも必要だと思っている。

多分、世の中では、”過去は省みない派”が多数派で、圧倒的に勝利しているだろう。しかし、この映画を見ると、本音ではみんな、過去を深く省みて、よく生きたいと思っているのではないか、と希望を感じる。

二人の主役はもちろん良かった。お婆さんは、両方の立場を行ったり来たりしながら、励まされながらも目を背けなかった。過去と向き合わずににはいられなくなった弁護士の行動力にはシビレた。弁護士の奥さんの心根には感動し、好きになった。でも、個人的にはオーストリアで返還が決まったことに凄さを感じた。

ドイツはアウシュビッツ裁判で、自分自身を省みた。オーストリアも誇りを持てる国となった。我が日本はどうだろうか。