かや

黄金のアデーレ 名画の帰還のかやのレビュー・感想・評価

4.0
今年公開映画128本目。

1枚の絵が世界を変えた。
第二次世界大戦下、なんとか亡命してアメリカに渡ったオーストリア人のマリアが、クリムトの名画の返還を求め、オーストリア政府を相手取り、裁判を起こした実話の映画化。

同じく今年公開の「ミケランジェロプロジェクト」でも描かれていた、第二次世界大戦下のナチスドイツの美術品強奪による出来事である。
一つの絵にフォーカスした映画で言うと、上記作品のレビューでも書いたと思うが、「ミケランジェロの暗号」に近い部分はある。


歴史×法廷もの。
鑑賞前にちょっと調べたくらいだったから、こういった事実を詳しく知れたのは良かった。

裁判を起こす現在のパートと、マリアがオーストリアに住んでいてアメリカに逃げるまでの過去パートとが、交差するように描かれており、このリンクのさせ方というか繋げ方が非常に上手い。
過去パートはセピア調という雰囲気の違いもあり、ナチスの怖さもあってしっかり恐怖を煽る作りになっている。

逆に現在パートは、老女×青年のバディムービーのようになっており、お茶目で皮肉たっぷりのジョークがあることで、暗くなりすぎないように仕上げている。

本来の絵の所有者であり、裁判を起こした老女マリア役はヘレンミレン。
貫禄が違う。
画面に出てるだけで作品の品が良くなる。
そして本人にも似てる気がして、それも良い要因の一つだ。
彼女の複雑な揺れ動く心情をリアルに、そして我々に分かりやすく演じていてお見事。

弁護士の青年ランディ役はライアンレイノルズ。
本作は彼の成長物語でもあるのだが、最初のヘタレ感から、堂々とした立ち振舞いになるまでの過程を上手く演じていた。
彼のクライマックスの審問会でのスピーチは最大の見所。

ダニエルブリュールは好きだし、今回の役は良かったが、そこまで強い印象は与えられず。
逆にランディの上司役のチャールズダンスの方が印象に残ってる。
「ゲームオブスローンズ」のタイウィンにしか見えないが…笑

そして重厚でずっしり響く素晴らしい音楽。
天才ハンスジマーは間違いない。


実際の話とは言え、映画という作り物なのだから、法廷シーンにもう少しバトル演出があっても良かったんでは。
ここにもっと迫力があれば、さらに魅力的な映画だと感じれただろう。


ナチスドイツが略奪した美術品は約60万点と言われており、その内10万点は本来の所有者に戻されていないとのこと。
70年経った今でも、こういった形で戦争の爪痕として残されている。

過去を忘れ去り、取り繕うことが、戦争による悲劇を解決する手段として正しいのか?
本作は正義を描いた映画であり、弁護士のランディが自分の過去やルーツを知り、考えることで変化が起きたように、若い世代に歴史、過去を知ること、学ぶことの大切さを説いているのではないだろうか。

感動したなんて言葉だけでは片付けてはいけない、たった一枚の絵から世界を学ぶ必要さを教えられているような、そんな素晴らしい映画でした。

実話で結末は分かってるとは言え、名画の帰還っていう邦題はいかがなものか。
結末をタイトルで言うって正気の沙汰とは思えないですね。

字幕担当者の名前が最初に出てきた時に、「うわぁ…字幕戸田さんかぁ…」って思わず呟いた人がいて面白かった笑