けーな

黄金のアデーレ 名画の帰還のけーなのレビュー・感想・評価

4.1
今作は、とても盛り沢山な内容の映画で、絵画を取り上げただけの映画ではなく、ナチスドイツに併合されたオーストリアでナチスに迫害されたユダヤ人を映し出した戦争映画でもあり、また、国を相手に訴訟を起こし、最高裁まで闘うという法廷映画でもあり、ユダヤ人としての家族の過去を封印して生きてきた1人の女性を描いたノンフィクションのヒューマンドラマでもある。

グスタフ・クリムトの名画「黄金のアデーレ」は、オーストリアのモナリザとも呼ばれる有名な絵画。オーストリアの資産家がクリムトに依頼して描かせた妻アデーレの肖像画である。その絵は、第二次世界大戦中にナチスに略奪され、その後、オーストリアが所有していたのだが、アデーレの姪マリア・アルトマンが、絵の返還を求めて、オーストリア政府を相手に訴訟を起こしたその実話を描いたのが、この映画。

私は、画家の中で、クリムトが最も好きな画家であるため、今作を観るのが楽しみでならなかった。しかも、私自身、20年近く前にウィーンを訪問した際に、ベルヴェデーレ宮殿美術館で、この「黄金のアデーレ」を鑑賞した経験がある。まだオーストリアがこの絵を所有していた時代だったのだ。マリアに返還された後、ニューヨークのノイエ・ガレリエ画廊が買い取って所有しているので、クリムトが描いたオーストリアの地で、この名画を観ることは、今では叶わないことだと思って、実に感慨深い。
ヘレン・ミレンが主人公マリアを見事に演じているし、弁護士役のライアン・レイノルズや、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズも素晴らしい演技で脇を固めている。