ぴろぴろ

黄金のアデーレ 名画の帰還のぴろぴろのレビュー・感想・評価

4.6


ドラマティックな秀作だった。 ヘレン・ミレンが凛として美しく、また おばちゃん加減も絶妙で何とも魅力的だ。 人の佇まいは昨日今日で表現出来るものではなくて、彼女の積み重ねて来たものが滲み出た味わい深い素晴らしい演技だった。
ナチス・ドイツに没収された世界的に有名なクリムトの絵画をめぐり、オーストリア政府を相手に訴訟を起こしたマリア・アルトマンの実話。 法廷モノというより、マリアの過去と現在が巧みに交差する。 随所に歴史と過去を織り交ぜながら、時代の波に翻弄された1人の女性の人生が語られて行く。 静かで深くて、とても悲しい過去。
少し前に観た「ミケランジェロ・プロジェクト」が効いた。 ヒトラーの罪深さ。 ナチスによるオーストリア併合により理不尽な略奪・迫害を受けたユダヤ人たち。 個人の自由も財産も、大切な人も容赦無く奪われる。 ヒトラーが美術学校に合格さえ出来ていたら、本当に世界史は変わっていたのかもしれない。
マリアが過去を取り戻す為に、幼い日の伯母との温かい思い出と共に、同時に向き合わなければならない辛い過去。 若い日のマリアの逃走劇には手に汗握る緊張感と、とても悲しい別れがあった。
マリアと弁護士ランディとジャーナリストのフベルトゥス、三人三様の正義とルーツの見せ方が秀逸。 「アイデンティティ」ってやつですね。
フベルトゥスが、彼らを助けた理由が最後に明かされる。 ここも唸る。 最後まで引き込まれる見応えがある秀作だった。
美しいウイーンの街と「黄金のアデーレ」は、いつかこの映画を思い出しながら見てみたい。