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黄金のアデーレ 名画の帰還のishiwasaのレビュー・感想・評価

4.0
芸術教養の高い一家に生まれ、かつて最愛の伯母の姿が描かれたクリムトの名画、"Woman in GOLD"を戦時中にナチスに不当に奪われ、オーストリアのベルベデーレ美術館から取り戻す訴訟を起こしたマリア・アルトマンの実話映画。

正直な感想を言うと、自分が思い描いていた作品よりも遥かに高尚で美しく、またサスペンスフルで感動的な映画でした!
エンドロールの最中まで、涙が止まりませんでしたよ!
109分と非常にコンパクトな上映時間にも関わらず、本筋となる裁判のお話と同時進行で、若かりしマリアのウィーン脱出劇までを描いてしまう。
一見詰め込み過ぎに見えるにも関わらず、
徐々に信頼関係を構築していく、マリアとランディのバディムービー的要素、スタート時点ではお互いが金額面の問題を口実にした依頼者と弁護人の関係であったのに、その内オーストリアの妨害に遭いながらも目的達成の為に内面が変わっていくドラマ面まで、過不足なく描かれている!
緻密さにこだわった構成がエンディングに向かうにつれて、徐々に熱を高め、ラストに両親との悲しい真実が明らかになる。ここで涙があふれてしまいました。僕が観た劇場はグスン音で一杯でしたよ。

マリア・アルトマンを演じたヘレン・ミレン(REDでマシンガンをぶっ放すあのお婆さんです)
は気品漂う雰囲気で一連の所作までが美しいので申し分無いのですが、オーストリア政府と闘うことで自らの過去の傷までえぐられ疲弊し何度も諦めようとします。この闘いが決して彼女の内面でも一筋縄でいかなかった事がよく分かります。
そして、ハリウッドで最も過小評価されている俳優の1人、ライアンレイノルズが好演。ウィーンに行って弁護士としての使命感に目覚めるランディの転換をよく演じきっています。特にウィーンでのラストの演説シーンでは一連の物語を通しての成長が結実する瞬間を眩しい演技で表現。本当はなかなか良い俳優なんです。グリーンランタンとかやってる暇無いでしょあなた。
デッドプールも辞めて早くマトモな作品に出なさい!

あとは脇を固める役者も良かったです。
理解と人間味のある最高裁の判事には、不思議と安心感を覚える事が出来ましたし、ウィーンで2人を支えるダニエルブリュールが、2人を支援した理由を明かすシーンが非常に魅力的でした。

何より、全体を通して良かったのは、この裁判を国対国のお話として描くのではなく、かつて間違った形で奪われてしまった自分の家族のものを、自分の元にただ取り戻したいと願う1人の女性のパーソナルなドラマとして描いた点です。
「彼女は、この絵画を本来あるべき持ち主の手に取り戻したいだけなのです。」
このセリフが、この作品の全てを表していると思います。
それは、1人の人間が、暗黒の歴史によって奪われた尊厳をもう一度この手に取り戻すための戦いでもあったのでした。

まだまだナチスに奪われた美術品は約10万点わ越えると言われておりますが、正当な持ち主の元に戻る日は来るのでしょうか…。

本当に素晴らしい映画でした。
オススメです。